実務家のための知的財産権判例70選発明協会にて発売中!

省エネ行動シート事件

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H24.12.5 知財高裁 平成24年(行ケ)10134

判決のポイント

構成及びそれを提示する手段が,専ら,人間の精神活動そのものを対象とする創作は自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえず,発明の奏する作用効果も心理学的な法則を利用するもので自然法則を利用した効果とはいえない場合,特許法2条1項にいう「発明」に該当しない。

参照条文

特許法2条1項 特許法29条1項柱書

Key Word

発明該当性,自然法則の利用,技術的思想,人間の精神活動

ダイアフラム弁事件

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H24.10.10 知財高裁 平成23年(行ケ)10383

判決のポイント

引用文献に記載された特定構造を請求範囲から除外するための発明特定事項を追加する補正について,新規事項を追加するものである,として却下した審決が取り消された。

参照条文

特許法17条の2 3項

Key Word

新規事項,新たな技術的事項の導入

光学増幅装置事件

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H24.9.27 知財高裁 平成23年(行ケ)10201

判決のポイント

先行技術として刊行物に発明が記載されているとは,発明を当業者が実施できる程度に開示されていなくても,対象発明と対比可能な程度にまで技術的事項が開示されていればよいとして,公知文献を先行技術として採用することを否定した審決が取り消された。

参照条文

特許法29条1項3号 特許法29条2項

Key Word

刊行物に記載された発明,公知文献,新規性,進歩性

タービン事件

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H24.10.10 知財高裁 平成23年(行ケ)10396

判決のポイント

引用例に,本件発明と同様の構成が開示されていたとしても,その構成が発揮する機能が発明によって異なる場合は,引用例に開示の構成がいかなる機能を果たすものであるかを直ちに断定できないとして,本件発明の進歩性が認められた。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,技術的意義,引用発明の認定,構成と機能

護岸の連続構築方法事件

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H24.7.25 知財高裁 平成23年(行ケ)10371

判決のポイント

発明を構成する個々の断片的な公知技術があっても,発明の着眼の記載や示唆がなければ,公知技術を組み合わせる動機も存在しないとして,原告の請求が棄却され,進歩性を認める審決が維持された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,組み合わせ,動機,着眼の新しさ

創傷部治療装置事件

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H24.9.26 知財高裁 平成23年(行ケ)10301

判決のポイント

引用発明1には,多孔性パッドの外側表面部の孔群について,同発明とは目的及び機序が異なる引用発明2の孔径を適用することに関し,そもそも動機付けが存在しないとして,本件発明の進歩性が認められた。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

動機付け,目的及び機序,進歩性

ベクター事件

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H24.5.28 知財高裁 平成22年(行ケ)10203

判決のポイント

各引用例に発明の各構成要素が開示されていても,それらの組合せから期待される結果が得られるかどうかが予測困難であるような技術的な事情があるときには,当該発明の進歩性を否定することはできない。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

容易想到性

電動モータ事件

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H24.6.13 知財高裁 平成23年(行ケ)10364

判決のポイント

含有割合の下限のみを規定する本願発明に対し,特許庁は,発明の詳細な説明は含有割合が100重量%近くの場合にも当業者が本願発明を実施できるようには記載されていないから実施可能要件を満たさないと主張したが,裁判所は,そのような想定は不合理な前提であるとして退けた。

参照条文

旧特許法36条4項(平成14年改正前特許法)

Key Word

実施可能要件,作用効果,当業者

発光装置事件

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H25.1.31 知財高裁 平成24年(行ケ)10020

判決のポイント

物の発明につき,明細書にその製造方法の具体的な記載がなくても,明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を製造できれば実施可能要件を満たす。

参照条文

特許法36条4項1号

Key Word

実施可能要件

核酸合成方法事件

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H24.10.31 知財高裁 平成23年(行ケ)10275

判決のポイント

本件明細書には,本件発明の作用機序や技術的思想,構成及びその技術的意義に関する詳細な説明が記載されており,本件発明の課題を解決できると認識できるから,サポート要件を満たすとされた。

参照条文

特許法36条6項1号 旧特許法36条4項(平成14年改正前特許法)

Key Word

サポート要件,実施可能要件

ヒンダードフェノール性酸化防止剤組成物事件

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H21.10.29 知財高裁 平成24年(行ケ)10076

判決のポイント

酸化防止剤組成物に含まれる不純物を数値範囲で規定した数値限定発明であって実施例の記載がない本願発明につき,サポート要件を満たしていないとした審決が取り消された。

参照条文

特許法36条6項1号

Key Word

サポート要件,技術常識

発光ダイオード分割出願事件

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H25.2.27 知財高裁 平成24年(行ケ)10123

判決のポイント

原出願の明細書に窒化ガリウム系化合物半導体の組成及び発光ピークの記載があったとしても,原出願発明の技術的課題及び解決方法の趣旨に基づき,組成及び発光ピークの限定のない窒化ガリウム系化合物半導体が原出願の明細書に記載されていると認定し,分割要件を満たすとした。

参照条文

特許法44条1項

Key Word

分割要件

回路部材の接続構造事件

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H24.9.10 知財高裁 平成23年(行ケ)10315

判決のポイント

出願前の周知の技術事項等であるとして審決で初めて示された文献は,相違点に関する副引用発明として用いられているから,新たな拒絶理由とすべきだった。この拒絶理由通知を欠く審決には特許法159条2項,同法50条に定める手続違背の違法があり,審決の結論に影響があるとされた。

参照条文

特許法50条 特許法159条2項

Key Word

手続違背,拒絶査定の理由とは異なる拒絶の理由

蛍光X線分光システム事件

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H24.10.25 知財高裁 平成23年(行ケ)10433

判決のポイント

審決取消訴訟で拒絶審決が一旦取り消されたが,差し戻しの審判によって再度拒絶審決となり,裁判所はこの再度の拒絶審決は支持した。

参照条文

行政事件訴訟法33条1項 特許法29条2項

Key Word

確定判決の拘束力

雨樋用管事件

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H25.1.24 知財地裁 平成24年(行ケ)10279

判決のポイント

基本的構成態様がありふれた態様であっても,その基本的構成態様が意匠の基調を形成して,共通の印象を強く与えるものであれば,意匠の類否の判断に支配的な影響を及ぼすものであることは否定できないとした。

参照条文

意匠法3条1項3号

Key Word

意匠の類否判断,基本的構成態様,ありふれた態様

あずきバー事件

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H25.1.24 知財高裁 平成24年(行ケ)10285

判決のポイント

「あずきを加味してなる菓子」を指定商品とする標準文字からなる商標「あずきバー」が,商標法3条1項3号に該当するが,その知名度等から同条2項に該当し,同法4条1項16号には該当しないとして,登録を認められた。

参照条文

商標法3条1項3号

Key Word

自他商品識別力,使用による識別力,標準文字,商標の同一性,商品の同一性,品質の誤認

ターザン事件

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H24.6.27 知財高裁 平成23年(行ウ)10399

判決のポイント

本件商標「ターザン」は,原告標章として広く認識されていたとは認められず,指定商品との関係でも顧客吸引力が認められず,剽窃の意図も認められないが,国際信義及び公正な取引秩序の維持の観点から,原告以外の第三者への商標登録は商標法4条1項7号に該当すると判断された。

参照条文

商標法4条1項7号

Key Word

公序良俗,国際信義,公正な取引秩序,取引秩序の維持

スバリスト事件

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H24.6.6 知財高裁 平成24年(行ケ)10013

判決のポイント

本件商標を構成する「SUBARIST」,「スバリスト」の語が,原告の製造する自動車のブランドである「SUBARU」あるいは「スバル」に由来する造語であることは明かであるとして,広義の混同が認められ,商標法4条1項15号に該当するとして,本件商標登録が無効とされた。

参照条文

商標法4条1項15号

Key Word

広義の混同,周知著名,混同を生ずるおそれ

発光ダイオード事件

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H25.1.31 東京地裁 平成23年(ワ)32488,32489

判決のポイント

被告のウェブサイトの記載は,特許法2条3項1号の「譲渡の申出」にはあたらないと判断された。

参照条文

特許法2条3項1号

Key Word

譲渡の申出,ウェブサイト

信号処理装置事件

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H24.8.31 東京地裁 平成22年(ワ)13766

判決のポイント

特許請求の範囲の解釈から,被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するとは認められないとされた。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項 特許法100条1項

Key Word

特許請求の範囲の解釈,特許発明の技術的範囲

レーザーによる材料加工方法控訴事件

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H24.11.29 知財高裁 平成24年(ネ)10023

判決のポイント

被告製品においても損傷を防ぐための対応が必要であることからすると,被告製品は損傷しないようにするための構成要件を充足している,と認定した。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項 特許法100条

Key Word

技術的範囲,構成要件における文言の意義,構成要件の充足性,事実認定

送受信線切替器控訴事件

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H24.10.30 知財高裁 平成23年(ネ)10081

判決のポイント

明細書の記載から技術的範囲が限定解釈され,文言侵害,均等侵害のいずれもがその成立を否定された。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

特許請求の範囲の記載に基づかない主張,課題解決原理

ペット寄生虫の治療・予防用組成物事件

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H24.9.13 東京地裁 平成21年(ワ)45432

判決のポイント

被告製品は,本件特許発明の各構成と本質的部分において異なり,製造等の時点において容易に想到することができたものではなく,意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情があるから,均等ではなく,本件特許発明の技術的範囲に属するものではないとされた。

参照条文

特許法70条 特許法100条 民法709条

Key Word

均等,本質的部分,容易想到,意識的除外

シリカ質フィラー事件

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H25.3.15 東京地裁 平成23年(ワ)6868

判決のポイント

測定対象試料の調整方法が明示されてない以上,いずれの調整方法による試料を測定しても数値範囲内とならない限り,構成要件の充足性は認められないとした。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

数値範囲,測定対象試料の調整方法,測定データの信用性

口紅容器事件

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H25.1.31 大阪地裁 平成23年(ワ)7407

判決のポイント

原告の製品は被告特許発明の技術的範囲に属すると認定しつつも,原告に先使用権を認めて,被告特許権に対する原告の侵害を否定し,一方,被告による原告取引関係者らへの侵害警告やインターネットでの侵害告知等の行為を,不正競争防止法における信用毀損行為と認定した。

参照条文

特許法70条 特許法104条の3 1項 特許法100条 特許法102条1項 特許法102条3項

Key Word

先使用権,技術的範囲の属否,信用毀損行為

位置検出器事件

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H24.11.1 大阪地裁 平成23年(ワ)6980

判決のポイント

本件特許発明の技術的範囲に属する製品の製造に用いられる被告製品について,特許法101条2号の間接侵害を認めた。また,原告特許は,先行技術に基づく容易想到の無効理由を有しており,権利行使が許されないとされた。

参照条文

特許法101条2号 特許法104条の3 特許法29条2項

Key Word

間接侵害,権利行使の制限,進歩性

紙おむつ用ごみ貯蔵カセット大合議事件

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H25.2.1 知財高裁 平成24年(ネ)10015

判決のポイント

特許法102条2項の適用について,特許権者において当該特許発明を実施していることを要件とするものではなく,特許権者に,侵害者による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の適用が認められると解すべきであるとされた。

参照条文

特許法101条2項

Key Word

損害額の算定方法,損害額推定規定の適用要件

護岸の連続構築方法事件

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H25.1.24 東京地裁 平成22年(ワ)44473

判決のポイント

原告は,侵害行為がなければ,原告の完全子会社が下請工事を受注し,限界利益の額に相当する当該子会社の株式価値の上昇益のうち,本件特許権の共有持分の割合に相当する利益を得ることができた,と認定された。

参照条文

民法709条 民法416条 商標法511条1項 特許法102条3項

Key Word

不法行為,通常生ずべき損害,損害額

データ送信方法及び送信装置事件

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H25.2.28 東京地裁 平成23年(ワ)38969

判決のポイント

標準規格必須特許に係る特許権のFRAND条件でのライセンス契約の締結準備段階において誠実に交渉を行うべき信義則上の義務を尽くすことなく,特許権に基づく損害賠償請求権を行使することは,権利濫用に当たり許されない。

参照条文

民法1条3項

Key Word

権利濫用,信義則上の義務,標準規格

立体フェイスマスク事件

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H24.11.8 大阪地裁 平成23年(ワ)3361

判決のポイント

意匠法規定の実施行為を直接実施しない場合であっても共同不法行為責任を認め,また個別事情を斟酌して通常より高い実施料率を採用して実施料相当額を算定した。

参照条文

意匠法37条1項 意匠法37条2項 民法719条1項前段 民法719条2項

Key Word

共同不法行為,実施料相当額

インディアンモトサイクル事件

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H24.5.30 東京地裁 平成22年(ワ)38525

判決のポイント

かつて有名であったがその後相当期間使用されることがなくなった標章について,無関係な第三者である原告の出願に係る登録商標には無効理由はなく,同商標権の行使は権利濫用とはならないとし,類似標章について商標権侵害を認めた。

参照条文

商標法37条1号 商標法36条1項 商標法36条2項 商標法4条1項7号 商標法4条1項10号 商標法4条1項15号 商標法4条1項19号

Key Word

無効理由,無効の抗弁,権利濫用

東京べったら控訴事件

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H24.9.27 知財高裁 平成24年(ネ)10031

判決のポイント

商品の包装に付された原告表示は,デザインや色彩等の特徴を備え,商品等表示に該当すると認められた。また,原告表示と,以前に使用されていた旧表示とは同一であり,両方の使用を考慮して,原告表示は周知であると認められた。

参照条文

不正競争防止法2条1項1号

Key Word

商品等表示,周知性

印刷受発注システム事件

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H24.6.11 東京地裁 平成22年(ワ)23557

判決のポイント

ある会社を退職した社員が退職前の会社の印刷用フィルム,フォームを無断で使用する行為に対して,損害賠償の請求が認められた。

参照条文

民法415条 民法709条 民法710条 民法715条 民法719条 不正競争防止法2条1項4号 不正競争防止法2条1項5号 不正競争防止法2条1項7号

Key Word

顧客情報,無断使用,使用者責任

ディスクパブリッシャー制御ソフト事件

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H24.12.18 東京地裁 平成24年(ワ)5771

判決のポイント

ソフトウェアのプログラムの複製や翻案の該当性については,具体的記述を対比して表現上の本質的な特徴を直接感得できるかどうかについて検討する必要があり,共通する箇所がオープンソースソフトウェアを利用した記述など,ありふれた表現にとどまる場合は作成者の個性は否定される。

参照条文

著作権法10条1項9号 著作権法21条 著作権法27条 著作権法26の2条1項 著作権法112条1項

Key Word

ソフトウェア,プログラムの著作物,著作物性,複製,翻案

釣りゲータウン2控訴事件

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H24.8.8 知財高裁 平成24年(ネ)10027

判決のポイント

被告作品に係る魚の引き寄せ画面から,原告作品に係る魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとして,翻案権等の侵害の成立が否定された。

参照条文

著作権法20条1号 著作権法23条 著作権法27条 著作権法112条 不正競争防止法2条1項1号 民法709条

Key Word

翻案,表現の本質的な特徴

圧電振動ジャイロ職務発明対価請求事件

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H24.4.25 東京地裁 平成22年(ワ)10176

判決のポイント

職務発明の実施に係る事業において最終的に損失があったとしても,超過売上高が存在する本件においては,独占の利益を否定することはできない。

参照条文

旧特許法35条3項 旧特許法35条4項(平成16年改正前特許法)

Key Word

職務発明,独占の利益,超過売上高