蓄熱式床下暖房システム事件
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H22.1.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10175
判決のポイント
明細書に記載のない数値範囲を含む記載を追加する補正が,新規事項の追加には当たらないと判示された。
参照条文
特許法17の2条3項 特許法36条5項
Key Word
新規事項,発明特定事項を補足したり説明したりする補正,新たな技術的事項の導入
自動装着機事件
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H21.8.20 知財高裁 平成20年(行ケ)10432
判決のポイント
形式的には請求項の増加に見える補正が,内容等が考慮されて,限定的減縮に該当するとされた。
参照条文
特許法17の2条5項
Key Word
限定的減縮,増項補正,補正の目的要件
旅行業向け会計処理装置事件
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H21.5.25 知財高裁 平成20年(行ケ)10151
判決のポイント
本件発明は不明確・未完成でなく,自然法則を利用した技術的思想の創作である。訂正請求書の補正は適法である。
参照条文
特許法36条6項2号 特許法29条1項柱書 特許法126条3項 特許法126条4項 特許法131の2条1項
Key Word
発明不明確,自然法則の利用,訂正請求書の要旨変更
外径1.6mmの灌流スリーブ事件
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H21.6.24 知財高裁 平成21年(行ケ)10002
判決のポイント
特許出願に際して願書に添付された図面は,設計図ではなく,特許を受けようとする発明の内容を明らかにするための説明図にとどまるとして,引用例の図面を根拠として認定した引用発明と本願発明との同一性が否定された。
参照条文
特許法29条1項3号
Key Word
新規性,同一性,引用発明の認定,引用例の図面
AC電流センサ事件
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H21.9.30 知財高裁 平成20年(行ケ)10431
判決のポイント
進歩性を判断する際,引用発明において周知技術を適用する動機付けの有無を検討し,動機付けが仮に存在しても,引用発明への周知技術の実際の適用を想定して阻害要因の有無を検討する必要がある。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,動機付け,課題の共通性,周知技術,阻害要因
電子証券発行システム事件
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H22.3.24 知財高裁 平成21年(行ケ)10212
判決のポイント
電子化証券の電子データに含まれる「契約内容を示すデータ」に相違点があっても,当該相違点に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明に基づいて,契約の内容を適宜取捨選択して容易に想到し得たものである。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,ビジネス関連発明,データの内容
車両の制御方法事件
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H22.1.19 知財高裁 平成20年(行ケ)10333
判決のポイント
請求項の構成要件に付された符号は,請求項に記載された内容を理解するための補助的な機能を有するに止まるものであり,これをもって実施例に記載された用語の意味に限定するものではないと判断された。
参照条文
特許法29条2項 特許法70条2項 特許法36条5項
Key Word
発明の認定,明細書の記載の参酌,符号,容易想到性
繊維強化成形体事件
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H21.4.15 知財高裁 平成20年(行ケ)10300
判決のポイント
本件発明の課題が当業者に広く知られていたとは認められず,一般的な課題の解決のために本件発明の構成に想到することは困難であるとして,進歩性を否定した審決を取り消した。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,一般的な課題,特定の課題,契機,技術常識
内燃機関の排ガス浄化方法及び浄化装置事件
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H21.9.16 知財高裁 平成20年(行ケ)10433
判決のポイント
拒絶理由に摘示されていない周知技術は,著名な発明として周知であっても,審決において容易想到性の認定判断の中で例外的に引用できるのは,引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られる。
参照条文
特許法29条2項 特許法50条 特許法159条2項
Key Word
手続違背,周知技術,容易想到性
ヘキサアミン化合物事件
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H21.11.11 知財高裁 平成20年(行ケ)10483
判決のポイント
先願明細書等に構造が具体的に記載されていない化合物を,特許法29条の2の先願発明として認定することはできないと判示した。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
先願発明の認定,発明の成立性
ワークの研磨装置事件
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H22.1.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10314
判決のポイント
「前記回転軸を,前記軸心に沿った方向,及び,前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段」の記載は,「軸心に沿った方向」と「軸心に直交する方向」の両方向に移動させることが可能であることを指すことが示された。
参照条文
特許法36条4項1号 特許法36条6項2号
Key Word
実施可能要件,明確性要件
性欲障害治療用薬剤事件
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H22.1.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10033
判決のポイント
医薬の用途発明に係る特許出願について,明細書の発明の詳細な説明に「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がないこと」のみを理由に,特許法36条6項1号の要件を充足しないとした審決の判断には,理由不備の違法がある,とされた。
参照条文
特許法36条6項1号 特許法36条4項1号
Key Word
医薬発明,薬理データ,サポート要件,実施可能要件
レボフロキサシン特許権存続期間延長登録事件
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H21.10.28 知財高裁 平成20年(行ケ)10487
判決のポイント
米国での臨床試験の期間は,日本での承認に必要な試験とはいえず,特許発明の実施をすることができない期間には算入できない。また,特許発明の実施をすることができない期間は,治験計画届や医療機関との契約書等によって客観的に明確になった日から進行を開始する。
参照条文
特許法67条2項 特許法153条2項
Key Word
特許権の存続期間の延長登録,外国臨床試験,手続違背
リチウム二次電池共同審判請求人欠落事件
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H21.11.19 知財高裁 平成21年(行ケ)10148
判決のポイント
複数在外者の共願に係る拒絶査定不服審判が,その一人のみにより提起された場合,補正の機会を与えねばならない。
参照条文
特許法131条1項 特許法131の2条 特許法132条3項 特許法133の1条 特許法14条
Key Word
共同出願,在外者,特許管理人,審決の合一確定,補正命令
多色有機ELパネル事件
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H21.11.19 知財高裁 平成21年(行ケ)10157
判決のポイント
差戻し後の訂正審判で訂正請求項の一部が独立特許要件を欠くことを理由に請求棄却とした審決が第1次判決の拘束力に違反するものとされた。
参照条文
行訴法33条1項 特許法126条
Key Word
判決の拘束力,訂正不可分
貼り薬事件
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H22.1.27 知財高裁 平成21年(行ケ)10209
判決のポイント
部分意匠の意匠権につき,当該部分を2色の色分け模様で構成した点に引用意匠との美感上の差異が認められた。
参照条文
意匠法3条1項3号 意匠法3条2項
Key Word
部分意匠,類否判断,色分け模様,美感,創作容易性
INTELLASSET事件
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H21.10.20 知財高裁 平成21年(行ケ)10074
判決のポイント
登録商標「INTELLASSET」が著名な略称「INTEL」を含むとして商標法4条1項8号に該当すると判断すべきではない。
参照条文
商標法4条1項8号
Key Word
著名な略称,著名な略称を含む商標
ベロマーク事件
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H22.1.13 知財高裁 平成21年(行ケ)10274
判決のポイント
申立理由以外の商標により取消決定することは問題がないとされた。引用商標が著名かつ独創性があり,引用商標に係る商品等が本件商品に係る指定商品等に含まれる場合でも,音楽は嗜好性が高く,需要者はそれなりの注意力で観察するので,広義の混同のおそれはないと判断された。
参照条文
商標法49条の9 1項 商標法4条1項15号
Key Word
申立理由以外の商標,需要者層,独創性,著名商標
NU-STEEL事件
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H21.12.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10171
判決のポイント
指定商品が二以上併記されていたとしてもそれら指定商品の関係は互いに排他的ではないこと,また,商標に文字が付されていたとしても全体外郭が保たれる等の事情を勘案すれば使用標章と本件商標とは社会通念上同一であることが認定され,不使用取消審決が取り消された。
参照条文
商標法50条
Key Word
不使用取消,指定商品,社会通念上同一
静電矯正器誤訳訂正書却下事件
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H22.1.26 東京地裁 平成21年(行ウ)358
判決のポイント
特許法184条の4第1項による外国語特許出願をもとの特許出願として,日本語で記載された明細書等を添付して行った新たな特許出願(分割出願)は,誤訳訂正書による補正が認められない。
参照条文
旧特許法44条(平成18年改正前特許法) 特許法17条の2 特許法36条の2 特許法184条の4 特許法184条の12 2項
Key Word
外国語特許出願,分割出願,誤訳訂正書,補正
少量材料分配用装置事件
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H21.4.21 東京地裁 平成19年(ワ)10772
判決のポイント
請求項の用語に関する特許権者の主張が特許請求の範囲の記載に基づかないとして退けられ,請求項において規定する記載がなく,特許明細書中にも定義する記載がないとする解釈に基づき,進歩性欠如により特許法104条の3第1項が適用された。
参照条文
特許法29条2項 特許法123条1項2号 特許法104条の3 1項
Key Word
進歩性,用語の解釈,特許法104条の3
地震時ロック装置事件
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H21.4.27 大阪地裁 平成20年(ワ)4394
判決のポイント
機能的表現からなる特許発明の解釈は,実施例に限定されるとは限らないと判断するとともに,分割出願の特許発明の解釈時に原出願明細書のみに記載された事項を参酌することは許されないとした。
参照条文
特許法44条 特許法36条6項1号 特許法104条の3 1項
Key Word
機能的表現,分割出願,サポート要件,特許法104条の3
テレビジョン番組リスト事件
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H21.7.15 東京地裁 平成19年(ワ)27187
判決のポイント
分割出願に係る特許発明の特許請求の範囲に記載された文言の解釈において,その特許発明の原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないとして,特許発明の特許請求の範囲に記載の文言の解釈を行った。
参照条文
特許法70条 特許法44条1項
Key Word
技術的範囲,文言解釈,分割出願
ナビタイムサーバ事件
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H22.3.30 知財高裁 平成21年(ネ)10055
判決のポイント
被告製品は本件訂正発明の構成要件gの「選択手段」を具備せず,また,被告製品は本件訂正発明の均等物ではないと判断された。
参照条文
特許法70条2項 特許法101条4号 特許法101条5号 特許法100条1項 特許法100条2項 特許法102条3項 民法709条
Key Word
技術的範囲,発明の詳細な説明の参酌,均等侵害
中空ゴルフクラブヘッド控訴事件
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H21.6.29 知財高裁 平成21年(ネ)10006
判決のポイント
特許請求の範囲の「縫合材」を明細書等の記載から解釈すれば文言侵害は成立しないが,「縫合材」であることは非本質的な部分であるとして均等侵害の成立が認められた。
参照条文
特許法70条
Key Word
用語の意義,文言侵害,均等侵害,本質的部分
回転式加圧型セパレータをそなえた粉砕機事件
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H21.9.15 東京地裁 平成18年(ワ)21405
判決のポイント
被告は,発明の詳細な説明及び意見書の内容等に基づき請求項に記載の用語を限定解釈するように主張したが,裁判所は,この主張を採用せず,原告への2億5,167万3,433円及び遅延損害金の支払いを容認した。
参照条文
特許法70条1項 特許法70条2項
Key Word
技術的範囲,用語の解釈,出願経過,限定解釈
重合可能なセメント混合物事件
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H21.4.22 東京地裁 平成18年(ワ)16119
判決のポイント
本件発明の構成要件中の1成分につき,原告が提出した分析実験の結果から当該成分が被告製品中に存在することが立証できたとはいえない,と認定された。
参照条文
特許法70条1項 民法703条
Key Word
構成要件充足性,実験結果,立証
熱伝導性シリコーンゴム組成物及び放熱シート事件
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H22.3.31 知財高裁 平成21年(ネ)10033
判決のポイント
補正により加えられた構成要件について,明細書の記載,出願経過等を参酌し用語の意義を限定的に解釈して文言侵害を否定し,その範囲外については特許請求の範囲から除外したと外形的に解されるとして均等侵害を否定した。
参照条文
特許法70条1項 特許法70条2項
Key Word
技術的範囲,発明の詳細な説明の参酌,出願経過の参酌,均等侵害,意識的除外,補正
医療検査用細胞容器事件
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H21.7.23 大阪地裁 平成20年(ワ)13282
判決のポイント
意匠の類否判断の基準を示した。
参照条文
意匠法24条2項
Key Word
類否判断,需用者,修正混同説
クリスタルキング事件
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H22.3.26 東京地裁 平成21年(ワ)1992
判決のポイント
歌手として出演する懐メロコンサートの新聞広告に,自己が所属していたバンド名と同一の標章を掲載する行為は,「商標の使用」には該当せず,当該商標権の侵害にならない。
参照条文
商標法2条3項8号 商標法3条2項 商標法36条1項 不競法2条1項14号 不競法3条1項 不競法4条 民法724条
Key Word
商標の使用,虚偽事実の告知・流布,消滅時効
AGATHA事件
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H21.10.13 知財高裁 平成21年(ネ)10031
判決のポイント
「Agatha Naomi」が採択されたとき以前から「AGATHA」は商品アクセサリーについて取引者,需用者間に周知されていたから,前者が一体として認識されるとしても「Agatha」の語から原告ないし原告の商品を想起,認識されるから,前者は後者に類似する。
参照条文
商標法37条1号 商標法2条3項8号 商標法36条1項
Key Word
商標の類否,結合商標
スイブルスイーパー事件
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H21.9.17 大阪地裁 平成20年(ワ)1606
判決のポイント
インターネット上のショッピングサイトを通して,ヘッド部分が回転する電気掃除機及びその附属品を販売した被告に対して,商標権侵害(原告1の請求)及び不正競争防止法に基づく(原告2の請求)損害賠償が認められた。
参照条文
不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法5条2項 民法709条
Key Word
商標の類否,商品等表示,周知性
ポリカーボネート樹脂製造技術事件
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H22.3.30 東京地裁 平成19年(ワ)4916(第1事件)
H22.3.30 東京地裁 平成20年(ワ)3404(第2事件)
判決のポイント
製造技術に関する営業秘密につき,被告の行為が不正競争防止法2条1項8号に該当するとして,図面等の使用,開示の差止め,記憶媒体の廃棄及び損害賠償の請求が認められた。
参照条文
不正競争防止法2条1項8号 不正競争防止法2条6項 不正競争防止法3条1項 不正競争防止法3条2項 不正競争防止法4条 民法709条
Key Word
営業秘密,不正競争行為
図表引用事件
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H22.1.27 東京地裁 平成20年(ワ)32148
判決のポイント
図表中のデータ(素材)の収集に労力を要したり困難性があったりする場合でも,その素材の選択及び配列がありふれた一般的なものであれば,当該図表は編集著作物に該当しないと判断された。
参照条文
著作権法12条1項 著作権法32条1項
Key Word
編集著作物,図表の引用,明瞭区別性,主従関係
オートバイレース写真事件
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H21.12.24 知財高裁 平成21年(ネ)10051
判決のポイント
事業者の一般的指揮の下にプロの写真家として行動し撮影した写真は,契約に基づいて提供された労務の成果物であっても職務著作には該当せず,著作者は写真家となる。
参照条文
著作権法15条1項 著作権法18条 著作権法19条 著作権法20条 著作権法59条
Key Word
職務著作,法人等の業務に従事する者,著作者人格権
TVブレイク事件
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H21.11.13 東京地裁 平成20年(ワ)21902
判決のポイント
著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る場合は侵害の主体となる
参照条文
著作権法21条 著作権法23条 著作権法112条 著作権法113条 プロバイダ責任制限法3条
Key Word
侵害行為の主体,カラオケ法理,プロバイダ責任制限法
抗CD20モノクローナル抗体共同発明事件
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H22.2.18 大阪地裁 平成21年(ワ)1652
判決のポイント
共同発明者名を発明者欄に記載せずに特許出願を行うことは,発明者掲載権の侵害であり,不法行為となる。
参照条文
パリ条約4条の3 特許法施工規則66条 特許法26条 特許法28条 特許法38条 民法710条
Key Word
発明者掲載権,共同出願違反
ラベルライター職務発明事件
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H21.6.25 知財高裁 平成19年(ネ)10056
判決のポイント
使用者が職務発明報酬対価請求訴訟を提起された後に初めて無効事由の存在を主張して従業者への配分を免れようとすることは旧特許法35条の趣旨のみならず禁反言の見地からも到底容認できず,さらに,権利放棄後の期間についても超過売上高の発生を観念し得ると判示した。
参照条文
旧特許法35条3項 旧特許法35条4項(平成16年改正前特許法)
Key Word
職務発明報酬請求,無効事由,権利放棄,超過売上高
「ピンク・レディーdeダイエット」パブリシティ権侵害事件
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H21.8.27 知財高裁 平成20年(ネ)10063
判決のポイント
パブリシティ権侵害の判断基準を示し,具体的事案においてパブリシティ権侵害を認めなかった。
参照条文
民法709条
Key Word
パブリシティ権,著名人,氏名・肖像の使用
ヒロドキシラジカル消去剤事件
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H22.1.20 知財高裁 平成21年(行ケ)10134
判決のポイント
医薬の用途発明の効果についてのサポート要件は,明細書中にin vivoの薬理的又は臨床的な検証の記載や示唆がなくても,in vitroの実験で用いた化合物等,それを適用した実験方法,そこから得られた結果及びその適用方法と特許出願に係る医薬の用途との関連性が明らかであれば足りる。
参照条文
特許法17の2条3項 特許法36条6項1号
Key Word
新規事項,サポート要件
押しピンカートリッジ事件
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H21.5.26 知財高裁 平成20年(行ケ)10394
判決のポイント
拒絶理由で「明りょうでない」と指摘されていない場合に,進歩性欠如の拒絶理由を回避するために明りょうでない記載を正した補正が,旧特許法17条の2第4項4号に規定する目的要件を満たすとされた。
参照条文
旧特許法17の2条4項(平成18年改正前特許法)
Key Word
明りょうでない記載の釈明,補正の目的要件,限定的減縮
遊技機発明成立性事件
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H21.6.16 知財高裁 平成20年(行ケ)10279
判決のポイント
特許法29条1項柱書の発明に該当するか否かは,発明全体として自然法則を利用した技術的思想の創作に当たるかどうかで判断すべきであることが判示された。
参照条文
特許法29条1項柱書
Key Word
特許法29条1項柱書,発明の成立性,自然法則の利用,技術的に意義のある部分
インターネットサーバーのアクセス管理事件
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H21.11.5 知財高裁 平成20年(行ケ)10297
判決のポイント
引用例に開示された事項についての技術的意義を離れて,その引用例の用語の抽象的な意義のみを抽出し,当該用語と本件発明の発明特定事項との共通性を検討した審決の判断は,「後知恵」の混入を避けられない。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,引用発明の認定,後知恵
ディジタル・ビデオ信号処理装置事件
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H21.4.28 知財高裁 平成20年(行ケ)10119
判決のポイント
引用発明に記載された文言の一般的な意味に捕らわれることなく引用発明全体から技術的意義を導き出し,一致点の認定を行うべきである。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,一致点認定の誤り,相違点の看過
GPSデータを使用したナビゲーションシステム事件
事件の表示
H21.11.18 知財高裁 平成20年(行ケ)10469
判決のポイント
拒絶理由に適示されていない周知技術等であっても,容易想到性の認定判断において,拒絶理由を構成する引用発明の認定や容易性の判断に補助的に用いる場合あるいは関連する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合であれば、新たな拒絶理由の通知なく拒絶査定・審決をすることも容認される。
参照条文
特許法29条2項 特許法50条 特許法159条2項
Key Word
手続違背,容易想到性,周知技術,引用文献,不意打ち
排泄物処理材事件
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H21.6.30 知財高裁 平成20年(行ケ)10396
判決のポイント
通常用いられない方法を想定して引用発明と対比することは不当であるとされ,特許無効審決が取り消された。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,通常用いられない方法,相違点認定の誤り
上気道状態を治療するためのキシリトール調合物事件
事件の表示
H21.3.25 知財高裁 平成20年(行ケ)10261
判決のポイント
容易想到性の有無は,事後分析的な判断等を極力排除して客観的に判断すべきであり,審決には引用例2の記載内容の認定の誤り及び引用例1,2の組合せの容易想到性判断の誤りがあるとして,拒絶審決を取り消した。
参照条文
特許法29条2項
Key Word
進歩性,引用発明の認定,事後分析的な判断,課題の把握
遊技機事件
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H21.9.30 知財高裁 平成20年(行ケ)10390
判決のポイント
特許法29条の2についての特許性の判断において,特許請求の範囲の記載が一義的に明確でない場合,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される。この参酌の結果,特許請求の範囲の記載において先願との関係で解釈の必要性が生じた複数通りに解釈可能な記載が,一義的に理解できるのであれば,特許請求の範囲の記載は不明確とはいえない。
参照条文
特許法29条2項 特許法36条6項2号
Key Word
特許請求の範囲の解釈,明細書の記載の参酌
スロットマシン事件
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H21.7.29 知財高裁 平成20年(行ケ)10237
判決のポイント
請求人が主張していない組み合わせの公知資料で権利者に意見陳述等の機会を与えずにした無効審判は手続違背があり,また,特許発明が明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄に記載された課題のいずれにも該当しないことのみをもって委任省令要件違反とした判断は誤りとされた。
参照条文
特許法134条2項 特許法153条2項 特許法134の2条1項 特許法36条4項1号 特許法36条6項1号
Key Word
手続違背,委任省令要件,サポート要件,実施可能要件
共沸混合物様組成物事件
事件の表示
H22.1.14 知財高裁 平成20年(行ケ)10235
判決のポイント
訂正請求によって具体的な実施例が本件発明の対象外となり,かつ,請求項の記載に一見すると矛盾が生じたが,明細書等の記載を参照して解釈することにより,実施可能要件違反はないと判断された。
参照条文
旧特許法36条3項(平成2年改正前特許法)
Key Word
実施可能要件,リパーゼ判決,発明の詳細な説明の参酌
無鉛はんだ合金事件
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H21.9.29 知財高裁 平成20年(行ケ)10484
判決のポイント
請求項1~4に係る特許がいわゆるサポート要件を満たしているとした。
参照条文
旧特許法36条6項1号(平成14年改正前特許法)
Key Word
サポート要件,記載不備
リュープリン特許権存続期間延長登録事件
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H21.5.29 知財高裁 平成20年(行ケ)10459
判決のポイント
特許権の存続期間の延長登録を認めない旨の審決が取り消された。
参照条文
特許法67条2項 特許法67の3条1項1号 特許法68の2条 薬事法14条2項3号
Key Word
特許権の存続期間の延長登録,先行処分,先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲,政令で定める処分の対象となった「物」,医薬品,有効成分,効能・効果
基板処理装置事件
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H21.6.29 知財高裁 平成20年(行ケ)10429
判決のポイント
冒認出願に対して特許がされたことを理由とする特許無効審判において,特許権者は,特許出願がその特許に係る発明の発明者等によりされたことについての主張立証責任を負う。
参照条文
特許法29条1項柱書 特許法123条1項6号
Key Word
冒認出願,主張立証責任
流体圧シリンダ事件
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H21.5.28 知財高裁 平成20年(行ケ)10401
判決のポイント
本願意匠の,引用意匠との相違点が相俟って生じる意匠的効果は,両意匠の共通点に係る各形態が生じるありふれた美感を超えているので,本願意匠は引用意匠に類似しないと判断した。
参照条文
意匠法3条1項3号
Key Word
類否判断,ありふれた形態,需要者の注意をひく部分,共通点と相違点
SIDAMO事件
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H22.3.29 知財高裁 平成21年(行ケ)10226
判決のポイント
商標法46条に基づき商標登録無効審判を請求する資格を有するのは,審判の結果について法律上の利害関係を有する者に限られる。「SIDAMO」はエチオピア国のコーヒーの生産地の名称であるが,識別性を有し,商標権者がエチオピア国である限り独占使用は公益上適当でないとは言えない。
参照条文
商標法3条1項3号 商標法4条1項16号
Key Word
請求人適格,地理的名称,品質誤認
pino+/【ピノプラス】事件
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H22.2.16 知財高裁 平成21年(行ケ)10236
判決のポイント
商標「pino+/【ピノプラス】」は,「ピノプラス」の表示があっても「pino」が要部とされて,引用商標「ピノ/PINO」及び「PINO ピノ」に類似すると判断された。
参照条文
商標法4条1項15号
Key Word
要部,周知・著名,独創性,商品の関連性,広義の混同,ただ乗り,希釈化,多角経営
DEEP SEA事件
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H21.10.8 知財高裁 平成21年(行ケ)10141
判決のポイント
水中でも使用できる腕時計に付された「DEEPSEA」の表示について,機能を表示するものと理解される可能性がある一方,品質を表示する語として一般的に使用されていないことなどから,自他商品の識別標識としての機能を果たすことが肯定され,商標法50条1項にいう使用の事実が認められた。
参照条文
商標法50条1項 商標法50条2項 商標法2条3項2号
Key Word
商標の使用,自他商品の識別力,商標的使用
JOURNAL/STANDARD事件
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H22.2.25 知財高裁 平成21年(行ケ)10189
判決のポイント
防護標章の登録要件について,単なる周知性では十分ではなく,非類似の商品や役務でも出所の混同を来す程の強い識別力,すなわちそのような程度に至るまでの著名性を有していることが必要として,具体的な事実認定をした。
参照条文
商標法64条1項 商標法36条 商標法37条
Key Word
防護標章登録の要件,著名性の判断
インターネットサーバーのアクセス管理特許権侵害事件
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H22.3.24 知財高裁 平成20年(ネ)10085
判決のポイント
引用例の技術的意義を離れ用語の抽象的な意義のみに基づいて本件発明の構成と対比することは後知恵のおそれがあり許されない。
参照条文
特許法29条2項 特許法104条の3 特許法70条1号
Key Word
引用例の用語の解釈,後知恵,侵害主体,特許法104条の3
レベル・センサ事件
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H21.12.24 大阪地裁 平成20年(ワ)10854
判決のポイント
特許請求の範囲において,一定の条件下における数値限定をした場合,それがなにゆえ,その条件下において定められているのか,詳細な説明においてその技術的意義が開示されていなければならない。
参照条文
旧特許法36条5項1号(平成6年改正前特許法) 特許法36条6項1号 特許法104条の3 1項
Key Word
特許請求の範囲,詳細な説明,サポート要件
腎疾患治療薬「クレメジン」事件
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H21.8.27 東京地裁 平成19年(ワ)3494
判決のポイント
「クレメジン」の後発医薬品である「メルクメジン」の製造・販売が,補正の不備による特許無効の主張,先使用による通常実施権の存在の抗弁などを排して,特許侵害であると認定された。
参照条文
特許法17条の2 3項 特許法79条 特許法100条1項 民法709条
Key Word
除くクレーム,新たな技術的事項の導入,先使用による通常実施権
蛍光電子内視鏡システム事件
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H21.12.16 東京地裁 平成21年(ワ)18950
判決のポイント
発明の詳細な説明の記載と,特許異議申立手続きにおける原告の意見書での主張が参酌されて,被告製品は特許発明の構成要件を充足しないと判断された。また,同意見書での主張が意識的除外に当るとして,均等侵害についても認められないと判断された。
参照条文
特許法70条1項 特許法70条2項
Key Word
発明の詳細な説明の参酌,禁反言,意識的除外
スナップ構造事件
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H22.2.14 知財高裁 平成21年(ネ)10060(控訴審)
H21.9.3 東京地裁 平成20年(ワ)12501(一審)
判決のポイント
請求項に記載された「下端部から上端部に沿って若干外側に膨らんだ」との語句の解釈が争われ,非侵害とされた。
参照条文
特許法70条1項 特許法70条2項
Key Word
技術的範囲,用語の解釈
遊技機特許権侵害事件
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H22.3.10 知財高裁 平成19年(ネ)10050
判決のポイント
技術的範囲の解釈にあたり,特許異議申立事件でなされた控訴人(特許権者)の訂正請求の経過が参酌され,被控訴人物件は特許発明の構成要件を充足しないと判断された。
参照条文
特許法70条2項
Key Word
発明の詳細な説明の参酌,出願経過,禁反言
記録紙事件
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H22.3.24 東京地裁 平成19年(ワ)32845
判決のポイント
被告製品が特許発明の構成要件を充足するか否かが,実験結果等に基づいて判断された。
参照条文
特許法70条1項 特許法70条2項 特許法100条
Key Word
構成要件充足性,実験結果
水系ゲル事件
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H22.1.27 東京地裁 平成20年(ワ)14169
判決のポイント
特許請求の範囲に記載された「イソブチレン-無水マレイン酸共重合体」の技術的範囲に,そのアンモニウム塩やアルカリ中和物が含まれないと判断された。
参照条文
特許法70条2項 民法709条
Key Word
技術的範囲,特許請求の範囲の解釈
組合せ計量装置事件
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H22.1.28 大阪地裁 平成19(ワ)2076
判決のポイント
(1)訂正前の特許請求の範囲の記載に基づく特許に無効理由があったとしても,直ちに特許法103条に規定する過失の推定が覆ると解することはできない。
(2)「損害及び加害者を知った」というためには,加害者の行為が被害者の特許権を侵害する行為であることを現実に認識することを要する。
参照条文
特許法103条 民法709条 民法724条
Key Word
過失の推定,消滅時効,損害を知った時
マンホール蓋用受枠部分意匠事件
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H22.1.21 大阪地裁 平成20年(ワ)14302(A事件)
H22.1.21 大阪地裁 平成20年(ワ)16194(B事件)
H22.1.21 大阪地裁 平成20年(ワ)16195(C事件)
判決のポイント
被告意匠と本件登録意匠との類否判断において,公知意匠を考慮しつつ本件登録意匠の要部認定を行い,被告意匠と本件登録意匠とは非類似であると判断した。
参照条文
意匠法24条2項
Key Word
部分意匠,類否判断,要部認定
コンバース事件
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H21.7.23 東京地裁 平成18年(ワ)26725(第1事件)
H21.7.23 東京地裁 平成19年(ワ)15580(第2事件)
判決のポイント
外国法人から譲り受けた商標権に基づく原告からの権利行使に対し,被告は商品の輸入販売が真正商品の並行輸入として違法性が阻却されると主張したが,同一人性の要件と品質管理性の要件を満たさないとして,商標権侵害が認められた。
参照条文
商標法2条3項 商標法25条 商標法37条
Key Word
真正商品の並行輸入
招福巻控訴事件
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H22.1.22 大阪高裁 平成20年(ネ)2836
判決のポイント
「招福巻」なる語は節分に食する巻き寿司を示す普通名称となっており,控訴人標章中の「招福巻」の部分には本件商標の商標権が及ばないとし,原判決中の控訴人敗訴部分が取り消された。
参照条文
商標法26条1項2号 商標法26条1項4号
Key Word
普通名称,慣用商標,普通名称化
派遣エンジニア営業秘密事件
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H22.3.4 東京地裁 平成20年(ワ)15238
判決のポイント
労働者派遣事業において,派遣労働者に関する情報及びその派遣先企業に関する情報が営業秘密として認められた。
参照条文
不正競争防止法2条1項7号 不正競争防止法2条6項
Key Word
営業秘密性,秘密管理性,有用性,非公知性
ウルトラマン事件
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H21.12.15 知財高裁 平成21年(ラ)10006
判決のポイント
海外における独占的利用権の有無につき国内の企業に書面を送付する行為について,当該書面は抗告人と取引に及べば損害を被ることが記載されたものとまでは認められず,当該書面の送付を受けた者がそのように理解するとも認められないとして,虚偽事実の告知・流布に相当しないと判断された。
参照条文
不正競争防止法2条1項14号
Key Word
虚偽事実の告知・流布,法適用通則法
仏頭部すげ替え事件
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H22.3.25 知財高裁 平成21年(ネ)10047
判決のポイント
被告Y1寺で観覧に供されている仏像について,著作者の死後に,その頭部のみをすげ替えた被告らに対し,原告Xが著作権侵害等を理由として原状回復等を求めた事案において,著作権法14条の推定が覆され,控訴審においては諸般の事情が総合考慮され,原状回復の求めが認容されなかった。
参照条文
著作権法14条 著作権法20条1項 著作権法20条2項4号 著作権法113条6項 著作権法115条
Key Word
著作者の推定,同一性保持権,名誉声望回復措置
チャップリン映画廉価版DVD事件
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H21.10.8 最高裁第一小法廷 平成20年(受)889
判決のポイント
旧著作権法の下で公開された映画の著作物の著作者については,その全体的形成に創作的に寄与した者がだれであるかを基準として判断すべきであり,映画の著作物であるという一事をもって,その著作者が映画製作者のみであると解するのは相当ではない,と判断された。
参照条文
旧著作権法3条 旧著作権法6条 旧著作権法22条ノ3(昭和45年改正前著作権法) 著作権法(昭和45年法律台48号)附則7条 著作権法52条 著作権法54条
Key Word
映画の著作物,保護期間,著作者,著作名義
「苦菜花」公衆送信権事件
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H21.10.28 知財高裁 平成21年(ネ)10044
判決のポイント
電気通信事業者Y2が電気通信役務利用事業者Y1の委託で番組Aを放送した事案で,Y2がAの制作編集等に関与せずY1からのAの信号を機械処理して放送したにすぎない場合は,特段の事情がない限り,Y2にはA放送の事前調査確認と無断放送防止義務違反の過失はないとされた。
参照条文
著作権法23条 著作権法77条1項 著作権法112条1項
Key Word
公衆送信権,受託者の注意義務,CSデジタル放送
加工工具職務発明事件
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H22.2.24 知財高裁 平成21年(ネ)10017
(原審H21.1.29 東京地裁 平成19年(ワ)12655)
判決のポイント
控訴人の従業員であった者がした職務発明について,控訴人は特許出願をせず,二重譲渡を受けた被控訴人が特許出願した場合であっても,控訴人の特許を受ける権利の承継は被控訴人に対抗できるとされた。
参照条文
特許法34条1項 特許法35条1項 特許法35条2項 民法177条
Key Word
特許を受ける権利の承継,背信的悪意者排除論,職務発明
排気浄化装置業務委託料等請求事件
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H21.12.17 知財高裁 平成21年(ネ)10036
(原審H21.4.16 東京地裁 平成19年(ワ)28849)
判決のポイント
業務委託契約に基づく業務委託料の請求は認められるが,控訴人は許諾製品の製造販売ができず,その原因が被控訴人の研究開発の遅延にあるので,特許実施許諾契約に基づく実施許諾料の請求は認められないとされた。
参照条文
民法127条1項
Key Word
業務委託契約,実施許諾契約,研究開発の遅延,停止条件