実務家のための知的財産権判例70選発明協会にて発売中!

携帯電話端末事件

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H24.1.17 知財高裁 平成23年(行ケ)10133

判決のポイント

特許請求の範囲の補正後に新規事項の追加を理由として最後の拒絶理由通知がされた場合に,新規事項の追加状態を解消すべく行われた補正が補正目的(特許法17条の2 5項)に該当しないとして却下した審決の判断が妥当であるとされた。

参照条文

特許法17条の2 3項 旧特許法17条の2 4項2号(平成14年改正前特許法)

Key Word

新規事項の追加,限定的減縮

ガラスカッターホイール事件

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H23.6.23 知財高裁 平成22年(行ケ)10258

判決のポイント

特許請求の範囲における用語が明確であったとしても,発明の技術的意義を明らかにするために明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することは問題ないとされた。

参照条文

特許法29条1項 特許法29条2項

Key Word

新規性,進歩性,発明の詳細な説明の参酌

高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板事件

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H23.10.31 知財高裁 平成23年(行ケ)10100

判決のポイント

引用例中の複数の実施例から適宜に構成を選択して引用発明を認定すること,また,数値範囲の一部のみが重複することをもって一致点とすることが否定された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

引用発明の認定,一致点の認定

熱応答補正システム事件

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H24.3.7 知財高裁 平成23年(行ケ)10214

判決のポイント

引用例における限定解釈を避けるための記載を拡大解釈した上で本願発明との相違点が設計事項であるとした審決の進歩性の論理付けを,裁判所が不適切な解釈として否定した。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,設計事項

気泡シート事件

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H24.1.16 知財高裁 平成23年(行ケ)10130

判決のポイント

積層体の発明において,要求機能に応じた層の追加自体は容易想到といえるとしても,2層の機能を1層で担保できる材料があれば,該2層のものを1層のものに代えることが直ちに容易想到であるとはいえない旨が判示された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,容易想到性,論理付け,技術分野,通常の創作能力

樹脂凸版事件

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H23.10.4 知財高裁 平成22年(行ケ)10329

判決のポイント

印刷に用いる樹脂凸版の発明について,特許庁が周知技術を認定するのに用いた文献の技術分野が異なることを理由として,進歩性を否定した拒絶審決が取り消された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,周知技術,技術分野

臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋事件

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H23.9.28 知財高裁 平成22年(行ケ)10351

判決のポイント

容易想到性の判断において,引用発明に周知技術を適用する場合でも,周知技術を適用せざる得ない解決課題が引用発明に記載又は示唆されている等の動機付けが必要である。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,容易想到性の判断,周知技術

うっ血性心不全へのカルバゾール化合物の利用事件

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H23.11.30 知財高裁 平成23年(行ケ)10018

判決のポイント

訂正に係る発明の進歩性を否定した審決が顕著な作用効果を考慮することなくなされたとして取り消された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

容易想到性,顕著な効果

標的核酸増幅用プライマーセット事件

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H23.10.11 知財高裁 平成21年(行ケ)10420

判決のポイント

本件審決と同様に阻害要因があることなどを理由に,本件特許発明は進歩性を有すると判断された。

参照条文

特許法29条2項 特許法36条4項1号 特許法36条6項1号

Key Word

進歩性,発明の要旨認定,実施可能要件,サポート要件

セボフルラン事件

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H23.4.7 知財高裁 平成22年(行ケ)10249
H23.4.7 知財高裁 平成22年(行ケ)10250

判決のポイント

訂正後の発明について,明細書の記載は実施可能要件を満たすとして,特許を無効とした審決が取り消された。

参照条文

民事訴訟法133条 特許法178条

Key Word

実施可能要件

マッサージ機事件

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H23.4.26 知財高裁 平成22年(行ケ)10331

判決のポイント

明確性要件違反の判断において,特許請求の範囲の記載が発明の作用効果を奏するように明確であるか否かが判断された。

参照条文

特許法36条6項2号

Key Word

明確性要件,作用効果

逆転洗濯方法および伝動機事件

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H23. 10.4 知財高裁 平成22年(行ケ)10298

判決のポイント

新たな引用文献を引用した審尋の後に拒絶理由を通知することなくした審決について,適正手続違反があったとされ,さらに,技術分野の相違を踏まえると進歩性判断の誤りがあるとされた。

参照条文

特許法17条の2 1項2号 特許法29条2項 特許法50条 特許法53条 特許法159条2項

Key Word

審尋,手続違反,技術分野

パンチプレス機における成形金型の制御装置事件

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H23.9.8 知財高裁 平成22年(行ケ)10404

判決のポイント

特許無効審判の審決が取り消された判決後に訂正審決が確定した場合の当該取消判決の拘束力の範囲について,取消判決で認定された相違点を細かく分けて検討することは,相当とはいえない。

参照条文

特許法181条5項 行政不服審査法33条1項 特許法128条

Key Word

取消判決の拘束力,拘束力の遮断

カラーコンタクトレンズ事件

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H23.11.30 知財高裁 平成23年(行ケ)10159

判決のポイント

意匠の類否を判断する基準として,カラーコンタクトレンズを装着した人と接する看者に与える美感を採用した。

参照条文

意匠法3条1項3号

Key Word

類否判断,刊行物に記載された意匠,看者,美感,印象

女性型香水容器立体商標事件

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H23.4.21 知財地裁 平成22年(行ケ)10366

判決のポイント

女性の胴体を模した香水容器の形状に係る商標が,機能又は美感に資することを目的とする形状として予測し得る範囲であるため商標法3条1項3号に該当するが,形状が一定の特異性を有すること及び使用実績が認められ,同法3条2項の要件を充足すると判断された。

参照条文

特許法41条 特許法30条4項 特許法18条の2

Key Word

立体商標,自他商品識別力,使用による識別性

BLACKたばこ・マッチ事件事件

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H24.2.15 知財高裁 平成23年(行ケ)10309
H24.2.15 知財高裁 平成23年(行ケ)10310
H24.2.15 知財高裁 平成23年(行ケ)10311

判決のポイント

商標の類否判断において,指定商品「たばこ」等については,取引の実情を考慮して非類似とされたが,指定商品「マッチ」については,出所の混同が生じるおそれを否定する取引の実情が存在しないとして,類似すると判示された。

参照条文

商標法4条1項11号

Key Word

商標の類否,取引の実情,出所の混同,外観,称呼,観念

Blue Note小売等役務事件

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H23.9.14 知財高裁 平成23年(行ウ)10086

判決のポイント

小売等役務商標における「特定小売等役務」と「総合小売等役務」の専有権(独占権)の範囲について,それぞれの独占権の範囲が重複しないように,明確な解釈基準が示された。

参照条文

商標法25条 商標法37条 商標法4条1項15号 商標法4条1項19号

Key Word

特定小売等役務,総合小売等役務,専有権の範囲,独占権の範囲,周知商標,出所の混同,不正の目的

マグネシウム合金薄板熱間圧延装置事件

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H23.10.28 東京地裁 平成22年(ワ)2863

判決のポイント

特許出願された発明のうち,一部の請求項に係る発明についての特許を受ける権利の有無の確認を求めることができるかどうかが争われた。

参照条文

特許法29条1項柱書 特許法33条1項 特許法38条 特許法49条2項

Key Word

特許を受ける権利,確認請求,秘密保持契約

プラバスタチンナトリウム大合議事件

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H24.1.27 知財高裁 平成22年(ネ)10043

判決のポイント

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関して,出願時において物の構造又は特性により直接的に特定することが不可能又は困難であるとの事情が存在しない場合,特許発明の技術的範囲及び無効の抗弁における発明の要旨は,当該製造方法によって製造された物に限定して認定される。

参照条文

特許法29条2項 特許法70条1項 特許法104条の3

Key Word

プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

運行管理システム事件

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H23.11.30 東京地裁 平成22年(ワ)40331

判決のポイント

被告装置がは本件発明の技術的範囲に属するが,引用発明から進歩性がないので権利行使の制限を受け,また,無効主張が時機に後れた攻撃防御方法ではないと認定され,さらに,訂正を理由とする対抗主張が時機に後れたと認定された。

参照条文

特許法29条2項 特許法70条 特許法104条の3 1項 民事訴訟法157条1項

Key Word

技術的範囲の属否,権利行使の制限,時機に後れた攻撃防御方法,訂正を理由とする対抗主張

車載ナビゲーション装置控訴事件

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H23.11.30 知財高裁 平成23年(ネ)10004

判決のポイント

本件特許発明は,被告装置との相違部分を置換することにより,本件特許発明で当該相違部分を採用したことによる作用効果が得られず,本件特許発明の目的を達成できなくなるので,均等の第2要件(置換可能性)を充足しないとして,均等を否定した。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

均等,置換可能性,技術的範囲,用語の意義

炉内ヒータ及びそれを備えた熱処理炉事件

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H24.3.22 大阪地裁 平成21年(ワ)15096

判決のポイント

比較的簡易な特許発明における,海外向け販売について,比較的高額な損害賠償(約1億2,800万円)が認められた。

参照条文

特許法70条 特許法104条の3 1項 特許法2条3項 特許法102条2項

Key Word

無効理由,進歩性,実施,共同不法行為

鉄骨柱の転倒防止方法事件

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H23.12.28 東京地裁 平成22年(ワ)43749

判決のポイント

原告による補正を根拠に,被告製品の使用方法は特許請求の範囲から意識的に除外されたものであるから,均等侵害の第5要件を欠くと認定された。。

参照条文

特許法70条1項

Key Word

均等,意識的除外

空気浄化用シート控訴事件

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H23. 8.9 知財高裁 平成22年(ネ)10086

判決のポイント

明細書の記載等から特許発明の構成要件の意義が解釈された上で,化学分析結果等の全証拠は,被告製品が該構成要件を充足していることを示していないと認定された。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

構成要件の意義,化学分析,試料採取

飛灰中の重金属固定化処理剤控訴事件

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H23.12.22 知財高裁 平成22年(ネ)10091

判決のポイント

本件発明の技術的範囲を限定解釈しあるいは作用効果不奏功の主張を認める理由はなく,本件特許に無効理由もなく,さらに被告製品は1審被告の先願特許発明の実施品に当たるものでもないとして,1審原告の差止請求を認容し,さらに地裁が認定した損害賠償を増額した。

参照条文

特許法70条 特許法104条の3 1項 特許法100条 特許法102条1項 特許法102条3項

Key Word

発明の技術的範囲,明細書の参酌,権利行使の制限

データ入力装置事件

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H23.7.12 東京地裁 平成20年(ワ)33440

判決のポイント

特許発明の技術的範囲に属さない物に用いられる物は,特許法101条2号の「その物の生産に用いられる物」に該当しない。主張しない意思を明確に示したにもかかわらず,当該主張に基づいて申し立てた口頭弁論の再開は認めない。

参照条文

特許法100条1項 特許法101条2号

Key Word

間接侵害,口頭弁論再開の申立て

食品の包み込み成形方法事件

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H23.6.23 知財高裁 平成22年(ネ)10089

判決のポイント

「椀状」という特許請求の範囲の技術用語の意味が,明細書の作用効果の記載,及び,当該技術分野において当業者が理解し認識するところに基づいて解釈された。

参照条文

特許法101条4号

Key Word

文言解釈,間接侵害

蒸気モップ事件

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H23.12.27 東京地裁 平成21年(ワ)13219

判決のポイント

蒸気モップの意匠権侵害について,被告製品が登録意匠に類似すると判断されると同時に,当該意匠権の独占的通常実施権に基づく損害賠償請求が認められた。

参照条文

意匠法3条1項3号 意匠法39条2項 意匠法39条3項

Key Word

類否判断,要部認定,独占的通常実施権,類推適用

浄水器事件

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H23.12.15 大阪地裁 平成22年(ワ)13746

判決のポイント

本件意匠に係る物品がデザイン性が重視される物品ではないとしつつも,被告が被告意匠を採用している理由が,本件意匠の実施品と同じサイズとすることにあったとして,損害額算定のための寄与割合は低いものではないと判断した。

参照条文

意匠法37条1項 意匠法39条2項 意匠法39条3項

Key Word

損害額,寄与度,寄与割合

Chupa Chups控訴事件

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H24.2.14 知財高裁 平成22年(ネ)10076

判決のポイント

ウェブサイトに開設された出店ページを介して出店者が商品を展示等する行為が商標権侵害となる場合におけるウェブサイトの運営者の責任について,運営者が,商標権侵害の事実を知った後の合理的期間内に商品を出店ページから削除していたため,商標権侵害の責任を負わないと判断された。

参照条文

商標法2条3項2号 商標法36条1項 不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法2条1項2号

Key Word

商標の使用,インターネットショッピングモール

Araisara商号事件

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H23.7.21 東京地裁 平成22年(ワ)46918

判決のポイント

原告の登録商標・服飾ブランド名等と,被告商号とが対比され,原告の登録商標・服飾ブランド名等を含む被告商号が,会社法8条の「他の会社であると誤認されるおそれのある商号」と認定され,被告商号の使用差止め等が認められた。

参照条文

会社法8条1項

Key Word

商号,他の会社であると誤認されるおそれ,不正の目的

書道用和紙事件

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H23.6.23 大阪地裁 平成22年(ワ)13602

判決のポイント

長年販売された色彩模様の書道用和紙でも,独自の特徴があるといえない場合には,商品等表示性は認められない。また,デッドコピーされた場合でも,商品形態の保護期間を経過していれば,不法行為の成立は認められない。

参照条文

不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法2条1項3号 不正競争防止法19条1項5号 民法709条

Key Word

商品形態,商品等表示性,形態模倣除外規定

東京べったら事件

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H23.10.13 東京地裁 平成22年(ワ)22918

判決のポイント

「東京べったら」の表示により東京都内で製造などと認識されず,原産地等誤認表示に該当しない。「・・・逸品です」の表示によりべったら漬け全部の品質との印象は与えず,品質等誤認表示に該当しない。「東京べったら漬」はその語のみで識別力を得た特段の事情は認められない。

参照条文

不正競争防止法2条1項13号 不正競争防止法2条1項1号

Key Word

原産地等誤認表示,品質等誤認表示,周知商品等表示

データ復旧サービス広告用文章事件

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H23.5.26 知財高裁 平成23年(ネ)10006

判決のポイント

データ復旧サービスに関する知見が「新しい知見」であったとしても,これをありふれた方法で表現するにすぎない場合には創作性を認めることはできず,また著作権以外にも具体的な権利又は利益の侵害が認められない以上,一般不法行為を理由に法的保護を受けることもできない,とされた。

参照条文

著作権法2条1項1号 著作権法19条 著作権法21条 著作権法27条 民法709条

Key Word

広告文,複製又は翻案,ウェブコンテンツ,不法行為

北朝鮮映画上告事件

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H23.12.8 最高裁第一小法廷 平成21年(受)602

判決のポイント

北朝鮮の国民の著作物は,ベルヌ条約により我が国が保護の義務を負う著作物として著作権法6条3号の著作物には該当せず,同号に該当しない著作物の利用行為は特段の事情がない限り不法行為を構成するものでもないとされた。

参照条文

著作権法6条3号 著作権法23条1項 民法709条

Key Word

ベルヌ条約,国際法,未承認国,不法行為

宗教団体創設者著作物事件

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H24.1.31 知財高裁 平成23年(ネ)10028

判決のポイント

著作権の取得時効の成立には,著作物の継続使用だけでは足りず,外形的に著作権者として複製権を独占的,排他的に行使する状態が継続されていることが必要である。

参照条文

著作権法21条 民法163条 民法709条

Key Word

著作権の時効取得,著作権者の誤った表示

YG性格検査用紙事件

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H23.11.24 大阪地裁 平成21年(ワ)20132(甲)
H23.11.24 大阪地裁 平成22年(ワ)4332(乙)

判決のポイント

著作権の共有者間の合意の成立を拒む場合は「正当な理由」が必要となるところ,出版物における技術的な問題はこれに当たらないと判断された。

参照条文

著作権法65条

Key Word

共有の著作権,合意,正当な理由