実務家のための知的財産権判例70選発明協会にて発売中!

アナログディジタル変換装置事件

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H22.6.9 知財高裁 平成22年(行ケ)10095

判決のポイント

特許庁による期間計算には誤りがあるとされ, 期間経過した後の審判請求であるとして 却下した審決が取り消された。

参照条文

特許法121条1項 特許法4条 特許法3条1項1号 特許法3条1項2号 特許法3条2項

Key Word

審判請求期間, 起算日, 期間の末日

無水石膏の製造方法事件

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H23.3.23 知財高裁 平成22年(行ケ)10234

判決のポイント

訂正の適否に関する判断に誤りはないとされた一方,訂正後の発明についての進歩性に関する判断に誤りがあるとされた。

参照条文

特許法126条3項 特許法126条4項 特許法29条2項

Key Word

新たな技術的事項の導入, 課題認識

スーパーオキサイドアニオン分解剤事件

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H23.3.23 知財高裁 平成22年(行ケ)10256

判決のポイント

用途限定が付された物の発明(用途発明)の新規性の判断につき,引用例に用途が記載されていない場合であっても,当該用途発明は引用発明と実質的に相違はなく,新規性を欠くものと判示された。

参照条文

特許法29条1項3号 特許法2条1項 特許法2条3項1号 特許法2条3項2号

Key Word

用途発明, 新規性, 未知の属性

抗ガングリオシド抗体産生細胞事件

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H22.10.12 知財高裁 平成22年(行ケ)10029

判決のポイント

引用例に記載の非寄託の細胞系につき,第三者からの分譲要求に応じる意思はなかったと認められる場合は,同細胞系は第三者が入手不可能であったことになるため,「分譲され得る状態にあった」との推定を前提として「刊行物に記載された発明」とした審決の判断は誤りであるとされた。

参照条文

特許法29条1項3号 特許法29条2項

Key Word

刊行物に記載された発明,細胞,寄託,分譲

ソースダウンパワートランジスタ事件

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H22.4.19 知財高裁 平成21年(行ケ)10268

判決のポイント

一の刊行物の発明の構成要素として他の刊行物の発明を採用する試みをしたはずとの示唆等が存在していなくても,双方の発明に技術課題の共通性が存在し,両発明の作用・効果の相乗効果が期待される場合には,両発明の技術を組み合わせる動機付けは存在するというべきと判断された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

動機付け,課題の共通性,示唆

電子ユニット事件

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H22.6.29 知財高裁 平成21年(行ケ)10324

判決のポイント

本件審決と同様,阻害要因があることなどを理由に本件発明に進歩性があると判断された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,阻害要因

液体収納容器事件

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H23.2.8 知財高裁 平成22年(行ケ)10056

判決のポイント

本件発明の構成の特徴に触れることなく,一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,本件発明と引用発明の相違点に関する容易想到性判断に至ったことは是認できないとされた。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

一般的抽象的な周知技術,過度に抽象化した事項,容易想到性

蛍光X線分光システム事件

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H22.8.31 知財高裁 平成21年(行ケ)10289

判決のポイント

前置審査で通知された拒絶理由の前提となった審判請求時の手続補正を却下して,その拒絶理由に基づいて拒絶審決を行っても,手続上の瑕疵はないとされた。

参照条文

特許法29条2項 特許法159条2項 特許法50条

Key Word

論理の矛盾,取消理由,補正却下,防御の機会

耐油汚れの評価方法事件

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H22.5.27 知財高裁 平成21年(行ケ)10361

判決のポイント

平易な構成からなる発明の容易想到性の判断においては,当該発明の解決課題及び解決方法の技術的観点から,公知発明との相違点が有する意義を分析検討し,他の公知文献から上記相違点に係る構成を得て本願発明に到達できるための論理プロセスを的確に行うことが,特に,要請される。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

容易想到性,解決課題,技術思想,技術的意味

経皮的薬剤配達装置事件

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H22.10.12 知財高裁 平成21年(行ケ)10330

判決のポイント

数値限定発明について,新規な観点に着目すること自体が容易ではなく,数値限定の技術的意義を明らかにする記載がないからといって進歩性が生じ得ないものではない,と判事された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,数値限定,技術的意義,周知技術

日焼け止め剤組成物事件

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H22.7.15 知財高裁 平成21年(行ケ)10238

判決のポイント

当初明細書には本願発明の効果を示す実施例は記載されていないが,その発明の効果に関する記載がされていると理解できるから,審判において提出された実験結果を参酌することが許され,また,その実験結果を参酌すれば本願発明は顕著な効果を奏する,と認定された。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

発明の効果の記載,出願後に提出された実験結果の参酌

遠赤外線放射セラミックス事件

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H22.11.24 知財高裁 平成22年(行ケ)10090

判決のポイント

製法の発明につき,製造された物の作用効果についての裏付けがないことにより,実施可能要件が否定された。

参照条文

旧特許法36条4項(平成14年改正前特許法)

Key Word

実施可能要件

発明展開度を出力する情報処理装置事件

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H22.6.29 知財高裁 平成21年(行ケ)10222

判決のポイント

「発明を展開している度合いを示す発明展開度」などの記載は不明確ではないと認定した。また,請求項には2つの変数を用いた演算,実施形態には3つの変数を用いた演算が記載されていたことについて,実施可能要件を認めた。

参照条文

特許法36条4項1号 特許法36条6項2号

Key Word

明確性要件,実施可能要件

コリオリ流量計の信号調整装置事件

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H22.11.30 知財高裁 平成22年(行ケ)10124

判決のポイント

審決が,拒絶理由通知又は拒絶査定において示された理由付けを付加又は変更する旨の判断を示すに当たっては,手続の公正及び当事者(請求人)の利益を害さない等の特段の事情がない限り,意見書提出の機会を与えなければならない。

参照条文

特許法159条2項 特許法50条

Key Word

手続違背,周知技術,意見書提出の機会

コンクリート部材接続装置事件

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H22.10.25 知財高裁 平成22年(行ケ)10270

判決のポイント

審判手続中に共同出願人の一人が破産手続開始決定を受けていたにもかかわらず破産管財人に受継させずに進められた審判手続による審決は無効とされ,また,破産した会社が前代表取締役を代表者として提起した審決取消訴訟は却下された。

参照条文

特許法132条4項 破産法44条1項 破産法46条

Key Word

審判手続の中断,破産,共同出願,訴訟費用

ヤクルト立体商標事件

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H22.11.16 知財高裁 平成22年(行ケ)10169

判決のポイント

類似形状の容器が数多く存在するとしても,それらが本件容器の模倣品であると需要者が認識しているならば,むしろ本件容器の立体的形状の自他商品識別力が強く推認でき,市場における独占適応性を過剰に考慮する必要はない,として本願について商標法3条2項に該当すると判断された。

参照条文

商標法3条1項3号 商標法3条2項

Key Word

立体商標,アンケート調査

クラブハウス事件

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H22.4.14 知財高裁 平成21年(行ケ)10354

判決のポイント

メールマガジンにおける標章の表示行為が,商品との具体的関係において使用されていることから,商標法2条3項8号の「使用」に該当すると判断された。

参照条文

商標法2条3項1号 商標法2条3項8号 商標法50条1項

Key Word

商標の使用,メールマガジン,商品との具体的関係,電子情報,商品に関する広告,インターネット,社会通念上同一

ユジャロン事件

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H23.1.25 知財高裁 平成22年(行ケ)10336

判決のポイント

需要者は,ハングル文字部分を正確に判読できなくても,当該部分を図形と認識することはなく,少なくとも文字と認識すると判断されたことにより,ハングル文字部分のない標章の使用が,ハングル文字部分を含む三段からなる登録商標と社会通念上同一であると判断された。

参照条文

商標法50条1項

Key Word

不使用取消,社会通念上同一,外国語文字,ハングル

鉄骨柱の建入れ直し装置事件

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H22.4.28 知財高裁 平成21年(ネ)10028
(原審 H21.3.5 東京地裁 平成20年(ワ)19469)

判決のポイント

無効の理由としてあげた主引例の技術分野及び解決課題が争われ,1審では無効理由ありとされたものの,控訴審では無効理由なしとされた。

参照条文

特許法29条2項 特許法104条の3

Key Word

技術分野,発明の課題,特許法104条の3

液体収納容器侵害事件

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H22.6.24 東京地裁 平成21年(ワ)3529

判決のポイント

一方のサブコンビネーション(組み合わされる装置)に係る特許発明について,他方のサブコンビネーション(組み合わせる装置)の記載があったとしても,直ちに明確性要件に違反するものではないとして,直接侵害が認められた。

参照条文

特許法36条6項2号 特許法100条1項 特許法101条2号 特許法104条の3

Key Word

サブコンビネーション,直接侵害,明確性要件,特許法104条の3

携帯電話機控訴事件

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H22.10.25 知財高裁 平成20年(ネ)10056

判決のポイント

原審では,対象製品の「暗号化された固定値」は本件特許発明の「番号識別子」に該当しないと判断された。一方,その控訴審では,明細書の記載等を参酌して用語の意義が解釈された結果,「番号識別子」に該当すると判断されたが,他の構成要件を充足しないとして侵害の成立は否定された。

参照条文

特許法70条1項

Key Word

文言解釈,技術的意義

切り餅事件

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H22.11.30 東京地裁 平成21年(ワ)7718

判決のポイント

請求書に記載された「載置底面又は平坦上面ではなく・・・側周表面に,・・・切り込み部・・・を設け,」は切餅の「載置底面又は平坦上面」には切り込み部等を設けず,「側周表面」に切り込み部等を設けることを意味するものと解するのが相当とされた。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

技術的範囲,クレーム解釈,技術的意義

研磨布事件

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H22.8.31 大阪地裁 平成21年(ワ)2097

判決のポイント

特許請求の範囲に記載された「セルを開口させず」及び「独立気泡フォーム」の意義が争われた結果,被告製品は特許発明の構成要件を充足しないとして,非侵害とされた。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

技術的範囲,用語の意義

プラバスタチンナトリウム事件

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H22.3.31 東京地裁 平成19年(ワ)35324

判決のポイント

プロダクト・バイ・プロセス・クレームで記載された特許発明の技術的範囲について,原則として,「当該製造方法で製造された物に限られると解すべき」と判示して,構成要件a)(原告工程a))を充足しない被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するとは認められないとした。

参照条文

特許法70条1項 特許法104条

Key Word

技術的範囲,プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

飛灰中の重金属固定化処理剤事件

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H22.11.18 東京地裁 平成19年(ワ)507

判決のポイント

本件発明の技術的範囲を限定解釈する理由はなく,本件特許に無効理由もなく,さらに被告製品は被告の先願特許発明の実施品に当たるものでもないとして,原告の差止請求及び損害賠償請求を認容した。

参照条文

特許法70条 特許法104条の3 1項 特許法100条 特許法102条1項 特許法102条3項

Key Word

技術的範囲,明細書の参酌,権利行使の制限,特許法104条の3

モータ控訴事件

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H22.9.15 知財高裁 平成22年(ネ)10001他2件
(原審H21.11.26 大阪地裁 平成20年(ワ)9732他2件)

判決のポイント

「譲渡の申出行為」について,申出の発信行為又はその受領という結果の発生が客観的事実関係として日本国内においてなされたか否かにより,日本の国際裁判管轄の有無が決せられることになるとし,これを肯定した。

参照条文

特許法100条1項 民法709条 民事訴訟法5条9号

Key Word

国際裁判管轄,客観的事実関係,譲渡等の申出,特段の事情

幼児用補助便座事件

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H23.1.21 東京地裁 平成21年(ワ)18507

判決のポイント

権利行使制限の抗弁が不争条項の範囲外とされた。

参照条文

独禁法21条

Key Word

独占禁止法,不争条項

鉄筋用スペーサー事件

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H22.5.21 大阪高裁 平成21年(ネ)2465
(原審 H21.8.27 大阪地裁 平成20年(ワ)3277)

判決のポイント

登録意匠は創作容易で無効とすべきものとする無効の抗弁を認めた原審の判断が,控訴審においても是認された。

参照条文

意匠法3条2項 意匠法48条 意匠法41条(準特許法104条の3)

Key Word

創作性,無効の抗弁

Chupa Chups事件

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H22.8.31 東京地裁 平成21年(ワ)33872

判決のポイント

インターネット上のショッピングモールの出店者の出店ページに掲載された商品の販売に係る「譲渡」等の主体は,あくまで出店者であり,ショッピングモールを運営,管理する被告は「譲渡」等の主体に当たらないと判断された。

参照条文

商標法2条3項2号 不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法2条1項2号

Key Word

商標の使用,譲渡,譲渡のための展示,インターネット,ショッピングモール

S-cut事件

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H22.10.14 東京地裁 平成21年(ワ)10151

判決のポイント

商標法38条1項又は2項による損害額が選択的に主張され,同条2項に基づく4,728万円の損害額が認定された。一方,被告の商品の品質や価格,被告の営業努力等が認められ,被告が得た利益についての原告商標の寄与率(顧客吸引力)は40%と認定された。

参照条文

商標法32条1項 商標法38条1項 商標法38条2項 民法709条

Key Word

先使用権,損害額,損害額の算定,寄与率

角質除去具事件

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H22.9.17 東京地裁 平成20年(ワ)25956

判決のポイント

原告の角質除去具の販売開始から被告商品の販売開始まで1年2ヶ月であるが,原告商品の形態は同種商品と識別しうる独自の特徴を有しており,短期間でも強力な宣伝等を伴った使用により出所識別機能を獲得し,需要者間に広く認識されたことから,周知の商品等表示に該当すると判断された。

参照条文

不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法2条1項3号 不正競争防止法3条1項 不正競争防止法4条

Key Word

周知商品等表示,商品形態

コエンザイムQ10事件

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H22.4.28 東京地裁 平成18年(ワ)29160

判決のポイント

原告の保有する技術情報について,秘密管理性の有無に基づき,不正競争防止法2条1項6号に規定する営業秘密に該当するか否かの判断が示された。

参照条文

不正競争防止法2条1項4号 不正競争防止法2条1項5号 不正競争防止法2条6項

Key Word

営業秘密,秘密管理性

住宅ローン商品金利情報事件

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H22.12.21 東京地裁 平成22年(ワ)12322

判決のポイント

図表に記載されたデータを並び替える動作機能を備えた「動的な図表」の著作物性が否定された。

参照条文

著作権法10条1項6号 著作権法12条1項 著作権法12条の2 1項

Key Word

図形の著作物,編集著作物,データベースの著作物

携帯配信コンテンツ「恋愛の神様」事件

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H23.2.28 知財高裁 平成22年(ネ)10051

判決のポイント

コンピュータ・プログラムの具体的記述に作成者の何らかの個性が発揮されていない場合は創作性が否定される。また,翻案権侵害の判断は,創作性が認められる部分を対比して創作性がある表現における同一性の有無等の観点から判断すべきとされた。

参照条文

著作権法2条1項 著作権法10条3項 著作権法27条

Key Word

著作物性,創作性,コンピュータ・プログラム,翻案権侵害

ロクラクII事件

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H22.1.20 最高裁第一小法廷 平成21年(受)788

判決のポイント

事業者の管理,支配下において,アンテナで受信した放送を複製機器に入力し,当該機器に録画指示がされると放送番組の複製が自動的に行われる場合は,事業者はその複製の主体であると判断した。

参照条文

著作権法21条 著作権法98条

Key Word

間接侵害,複製

私的録画補償金請求事件

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H22.12.27 東京地裁 平成21年(ワ)40387

判決のポイント

著作権法104条の5に規定される協力義務は,法的強制力の伴わない抽象的な義務であり,製造業者等による任意の協力の履行に委ねたものである,とされた。

参照条文

著作権法30条2項 著作権法施行令1条 著作権法104条の5

Key Word

特定機器該当性,協力義務の法的性質

柔軟性中間材発明対価請求控訴事件

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H22.9.22 知財高裁 平成21年(ネ)10067
(原審H21.9.29 東京地裁 平成20年(ワ)27635)

判決のポイント

特許出願の願書に共同発明者として記載されていても,着想を提供した者ではなく,その具体化についても発明の完成を援助したことを超えて重要な貢献をした者でもないので,当該発明の発明者ではないとされた。

参照条文

特許法34条1項

Key Word

発明者の認定,共同発明者,対価支払債務