実務家のための知的財産権判例70選発明協会にて発売中!

プラズマ生成装置事件

事件の表示

H19.10.31 知財高裁 平成19年(行ケ)10062

判決のポイント

特許請求の範囲の減縮に該当するか否かは,特許請求の範の全体により判断すべきではなく,補正に係る個々の請求項に限定して判断すべきである。限定的減縮がされていない請求項につき独立特許要件を欠くことを理由として,補正を却下した審決には,手続上の瑕疵があるとされた。

参照条文

旧特許法17条の2 4項2号 旧特許法17条の2 5項 特許法29条2項 特許法53条1項

Key Word

特許請求の範囲の減縮,独立特許要件

ビットの集まりの短縮表現を生成する方法事件

事件の表示

H20.2.29 知財高裁 平成19年(行ケ)10239

判決のポイント

既存の演算装置を用いて数式を演算する装置が特許法2条1項にいう「発明」となり得るとすると,すべての数式が発明となり得べきこととなり,特許法2条1項の規定の趣旨を没却する旨を判示した。

参照条文

特許法2条1項 特許法29条1項柱書

Key Word

ソフトウェア関連発明,自然法則の利用,アルゴリズム

放射線感光材料用樹脂製造方法事件

事件の表示

H20.1.31 知財高裁 平成18年(行ケ)10346

判決のポイント

刊行物に記載された多数の置換基を含む一般式において,それぞれの置換基の具体例が多数記載され,その組み合わせが無数にある場合,特定の共重合体がその1つに当てはまるというだけでは,具体的な共重合体が開示されたとはいえないとされた。

参照条文

特許法29条2項 特許法29条1項3号 特許法126条5項

Key Word

進歩性,刊行物に記載された発明

異物検出装置事件

事件の表示

H19.5.30 知財高裁 平成18年(行ケ)10260

判決のポイント

審決には,引用発明との一致点・相違点の認定に誤りがある。予備的主張も,正しい認定を前提とする必要があり,その採用のためには,新たに弁明の機会を与えるべきである。

参照条文

特許法29条2項 準特許法50条

Key Word

進歩性,一致点・相違点の認定,意見を述べる機会

樹脂配合用酸素吸収剤事件

事件の表示

H19.10.31 知財高裁 平成18年(行ケ)10452

判決のポイント

発明の構成要件の1つである物質が特許出願前から一般に市販されていたという事実があっても,その物質の発明におけると同様の用途が公知になった時期が出願後である場合には,出願前からその物質がその用途向けに一般に市販されていたとはいえない,とされた。

参照条文

特許法29条2項 特許法123条1項2号

Key Word

用途の公知化,証拠記載事項の認定

吊り戸のガイド装置事件

事件の表示

H19.3.8 知財高裁 平成18年(行ケ)10484

判決のポイント

本件発明と引用発明1との相違点を開示するとされる引用発明2について,その技術的意義が相違点における技術的意義とは異なるから,相違点に係る構成を容易と解することはできないと認定された。

参照条文

特許法29条2項 特許法123条1項2号

Key Word

進歩性,技術的意義

電磁弁用ソレノイド事件

事件の表示

H20.3.26 知財高裁 平成19年(行ケ)10298

判決のポイント

いわゆる数値限定発明の進歩性の判断につき,特許庁は臨界的意義を求めたが,裁判所は,引用例にないそれなりの技術的意義を有するものであれば足りると判断した。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

数値限定,周知技術,進歩性

実装用基板事件

事件の表示

H19.7.12 知財高裁 平成18年(行ケ)10251

判決のポイント

副引例や周知技術の構成を主引例の構成に追加適用するに際し,副引例の構成により解決される課題が主引例において既に解決していることは,その適用の阻害要因となり得る。

参照条文

特許法29条の2

Key Word

阻害要因,解決すべき課題,進歩性

デジタルコンテンツの配信方法事件

事件の表示

H19.9.27 知財高裁 平成18年(行ケ)10511

判決のポイント

本願発明の課題と直接関係がなくても,タイムラグの発生及びタイムラグの間の処理が,発明の詳細な説明に記載されていない場合には,発明の実施が妨げられるので,発明の詳細な説明の記載が,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとされた。

参照条文

旧特許法36条4項

Key Word

発明を実施することができる程度,発明の実施の妨げ

半導体装置のテスト用プローブ針事件

事件の表示

H19.10.30 知財高裁 平成19年(行ケ)10024

判決のポイント

検査用プローブ針の特性を数値限定するのみで検査対象物の特性をなんら規定していない請求項が,サポート要件ありとされた。

参照条文

特許法36条6項1号 特許法123条1項

Key Word

数値限定,サポート要件,記載不備,用途限定

シリカ系被膜形成用組成物事件

事件の表示

H19.07.25 知財高裁 平成19年(行ケ)10247

判決のポイント

原出願の出願時の明細書等の記載からは,(b)成分が重要な意義を有することは認められるものの,(b)成分よりも重要度の低い(c)成分を含有しない発明が記載されていることにはならないから,特許請求の範囲から(c)成分を除いた本件分割出願は不適法であるとされた。

参照条文

特許法29条1項3号 特許法29条2項 特許法44条1項

Key Word

分割要件,原出願の出願時の明細書等に記載された発明

自動食器洗浄機用粉末洗浄剤事件

事件の表示

H19.11.28 知財高裁 平成18年(行ケ)10268

判決のポイント

「0.5重量%以下の水酸化カリウム」との記載は,発明の詳細な説明を参酌すれば「0.5重量%以上5重量%以下の水酸化カリウム」の誤記であることが明らかであるとして,訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものにあたらないとされた。

参照条文

特許法126条4項 特許法70条1項及び2項

Key Word

特許請求の範囲を変更する訂正

コンクリート製の水路壁面改良工法事件

事件の表示

H15.4.1 東京高裁 平成19年(行ケ)10081

判決のポイント

請求項4の訂正を認め,請求項1,2を無効とし,請求項4を無効不成立とした審決に対し,原告が請求項1,2を無効とする部分の取消しを求め本訴を提起したが,被告が無効不成立部分の取消訴訟を提訴しなかったため,訂正を認める部分が確定し,請求項1,2を無効とする部分を取り消した。

参照条文

特許法182条2項 特許法134条の2 4項 特許法123条1項柱書

Key Word

訂正の請求,訂正の帰趨,審決中の訂正を認める部分の確定

編み機およびヤーン切替え装置事件

事件の表示

H19.7.23 知財高裁 平成19年(行ケ)10099

判決のポイント

特許無効審判において,訂正を認めたうえで,一部の請求項に係る特許を無効とし,残りの請求項に係る請求を不成立とする審決がなされた後,請求を不成立とする部分の審決が確定すると,その審決の確定により,請求を不成立とする部分に係る請求項についての訂正も確定することが示された。

参照条文

特許法126条 特許法134条の2 特許法134条の3 特許法181条2項

Key Word

一部無効・一部不成立審決,訂正の確定効

貝吊り下げ具事件

事件の表示

H19.6.13 知財高裁 平成19年(行ケ)10078

判決のポイント

意匠の個々の構成態様がありふれているものであっても,その全体の印象として,特有のまとまり感のある意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に創作し得たとはいえないと判示し,創作非容易性を否定した審決を取り消した。

参照条文

意匠法3条2項 意匠法24条

Key Word

創作非容易性

CUBS事件

事件の表示

H19.8.8 知財高裁 平成19年(行ケ)10061

判決のポイント

図形商標の称呼について,周知度,使用状況,特許庁等における登録実績,引用商標権者の認識・理解,文字の図案化の一般的な態様から,不可分一体として認識される範囲が認定されたうえで判断された。

参照条文

商標法4条1項11号

Key Word

類否判断,不可分一体,取引の実情,周知性,登録実績

DonaBenta事件

事件の表示

H19.5.22 知財高裁 平成18年(行ケ)10301

判決のポイント

ブラジル国内で有名な商標と極めて類似する商標の出願,登録は,不正の目的をもって使用をするものであって,商標法4条1項19号に該当するとして,無効とされた。

参照条文

商標法4条1項19号

Key Word

外国における周知,不正の目的

東京メトロ事件

事件の表示

H19.9.27 知財高裁 平成19年(行ケ)10008

判決のポイント

無料で配布される新聞が,広告主との契約の履行をもって,商取引に供される商品に該当すると判断された結果,商標法上の商品該当性が肯定され,商標登録の取り消しを免れた。

参照条文

商標法50条1項 商標法1条 商標法2条3項2号

Key Word

商標法上の商品,広告掲載紙の無料配布,商品の商取引,無料の広告掲載紙,民間放送のビジネスモデル

置棚事件

事件の表示

H19.11.27 大阪高裁 平成16年(ネ)2563
H19.11.27 大阪高裁 平成16年(ネ)3016

判決のポイント

特許公報の発行前に行った通知により公報発行から設定登録時までの実施を違法とした。補償金請求権の警告を行えばその後の特許請求の範囲の減縮補正では再度の警告が不要とされた。

参照条文

特許法65条1項 特許法17条の2 4項 特許法103条

Key Word

文言侵害,均等,過失の推定,補償金請求権

胡麻健康食品事件

事件の表示

H20.3.27 東京地裁 平成18年(ワ)29554

判決のポイント

乙号証に記載のない本件発明の構成要件が,当業者の技術常識であるとはいえず,特許無効理由は認められないとして特許権者の請求が認容された。

参照条文

特許法29条1項3号 特許法29条2項 特許法100条1項及び2項 特許法102条2項

Key Word

特許請求の範囲の用語の意味の認定,技術常識の認定

インクカートリッジ事件

事件の表示

H19.11.8 最高裁第一小法廷 平成18年(受)826

判決のポイント

特許権の消尽の判断にあたり,国内等で譲渡した特許製品と同一性を欠く,新たな特許製品が製造されたと認められるときは,特許権行使が許されるとして,上告を棄却した。

参照条文

特許法2条3項 特許法68条 特許法100条1項及び2項

Key Word

消尽,発明の本質的部分,新たな製造

安定制御IC事件

事件の表示

H19.12.25 東京地裁 平成19年(ワ)4544

判決のポイント

特許請求の範囲に記載された「抵抗」は,「抵抗器」を意味すると解するのが相当であるとして,侵害が否定された。

参照条文

特許法70条1項及び2項 特許法100条1項及び2項

Key Word

技術的範囲,用語の解釈,均等侵害

スピーカ用振動板の製造方法事件

事件の表示

H19.10.31 東京地裁 平成16年(ワ)22343

判決のポイント

スピーカ用振動板の製造方法の特許権を有する原告Xが,被告Yに対して,損害賠償を請求した事件であり,原告Xが発明者であることが認定され,被告Yの先使用権は認められず,原告Xの請求が認められた。

参照条文

特許法38条 特許法49条1項6号 特許法79条

Key Word

真の発明者,先使用権,事業の準備

増幅器付スピーカー事件

事件の表示

H19.4.18 東京地裁 平成18年(ワ)19650

判決のポイント

意匠権者(被告)から販売停止を求められた販売業者(原告)が,多機能物品との非類似及び意匠の形態面での非類似を主張して差止請求権不存在確認を求めたが,公知意匠を参酌して広い類似範囲が認められ,原告の請求が棄却された。

参照条文

意匠法23条 意匠法37条1項

Key Word

多機能物品の類否,公知意匠の参酌

MACKINTOSH事件

事件の表示

H19.12.21 東京地裁 平成19年(ワ)6214

判決のポイント

「ゴム引き布地製コート」の意味を有し,第三者の商標として著名であった「MACKINTOSH」の文字を含む登録商標による権利行使に対し,アイルランド製コート類への被告標章の使用が,商標権侵害に当たると認定され,差止請求が容認された。

参照条文

商標法36条1項 商標法3条1項1号 商標法26条1項2号

Key Word

商標の使用,著名商標,普通名称,権利不要求,権利濫用

タイアップ広告事件

事件の表示

H20.2.7 大阪地裁 平成19年(ワ)3024

判決のポイント

件 判決のポイント タイアップ広告での商標の使用に対しなされた商標権侵害に基づく差止・損害賠償請求事件で,商標権侵害が認定され,広告掲載の差止が認められたが,損害額では,損害額の推定等はなされず,相当な損害額の認定がなされた。

参照条文

商標法2条3項8号 商標法36条1項 商標法38条2項及び3項 準特許法105条の3 不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法3条1項 不正競争防止法5条2項及び3項1号 不正競争防止法9条

Key Word

タイアップ広告,商標の使用,損害額の推定,相当な損害額

ポット型家庭用電解水生成器事件

事件の表示

H19.4.26 大阪地裁 平成19年(ワ)1806

判決のポイント

被告商品の形態は,同種商品が通常有する形態以外の形態が原告商品の形態と実質的に同一でないから,被告商品を販売する行為は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当しない。

参照条文

不正競争防止法2条1項3号

Key Word

商品の形態の模倣

大阪みたらし元祖だんご事件

事件の表示

H19.10.25 大阪高裁 平成19年(ネ)1229

判決のポイント

和菓子の標章として「元祖」の表示を使用する行為につき,本件事実関係の下では不正競争防止法2条1項13号の品質誤認表示行為に該当しないと判断した。

参照条文

不正競争防止法2条1項13号

Key Word

品質誤認表示

液晶モジュール事件

事件の表示

H19.10.31 知財高裁 平成18年(ネ)10040

判決のポイント

権利者による競業者の取引先への仮処分申立て等が不法行為に当たるとされた。

参照条文

民法709条 不正競争防止法4条1項14号

Key Word

仮処分申立て,仮処分申立て前の調査・検討,交渉の経緯

MYUTA事件

事件の表示

H19.5.25 東京地裁 平成18年(ワ)10166

判決のポイント

音楽データを蔵置させるデータ領域を個人に貸与し,その個人が携帯電話を用いて自分の音楽データを聞くことを可能とするサービスが,音楽の著作権を侵害すると判断された。

参照条文

著作権法2条1項9号の4 著作権法21条 著作権法23条 著作権法30条

Key Word

複製,公衆送信,権利不存在確認訴訟

東京アウトサイダーズ・スナップ写真事件

事件の表示

H19.5.31 知財高裁 平成19年(ネ)10003

判決のポイント

一般人が撮影したスナップ写真であっても著作物性が認められ,著作権者の承諾なく当該写真を掲載した書籍は,書籍そのものの販売が差し止められる。

参照条文

著作権法2条1項1号 著作権法32条1項 著作権法19条3項 著作権法20条2項4号

Key Word

写真の著作物性,被告の過失

黒沢映画事件

事件の表示

H19.9.14 東京地裁 平成19年(ワ)11535

判決のポイント

映画の著作物を複製したDVD商品を輸入,販売する行為が著作権を侵害するとして,当該商品の増製,輸入及び頒布の差し止め並びに在庫品の廃棄が認められた。

参照条文

著作権法112条 著作権法113条1項1号 著作権法15条 著作権法16条 著作権法29条1項

Key Word

増製,全体的形成に創作的に寄与

ヴォンダッチ事件

事件の表示

H20.3.27 知財高裁 平成19年(ネ)10095

判決のポイント

著作権が二重譲渡され,著作権の移転は時間的に後であったが先に移転登録を受けた被控訴人について,被控訴人に対する譲渡の有効性が否定された結果,被控訴人は,控訴人への本件著作権の移転につき,対抗要件の欠缺を主張し得る法律上の利害関係を有する第三者(著77)には該当しないとされた。

参照条文

著作権法77条 民法94条1項

Key Word

二重譲渡,移転登録,背信的悪意者

特許を受ける権利共有持分者訴訟参加事件

事件の表示

H19.6.27 東京地裁 平成18年(ワ)126
H19.6.27 東京地裁 平成18年(ワ)20971

判決のポイント

特許を受ける権利の確認訴訟において,同権利の共有者であると主張する者による被告側への共同訴訟参加を認めた。

参照条文

特許法33条 特許法34条1項 民事訴訟法52条 民事訴訟法228条4項

Key Word

特許を受ける権利の譲渡,共同訴訟参加

磁気記録再生装置職務発明事件

事件の表示

H20.2.20 東京地裁 平成18年(ワ)24193

判決のポイント

発明者間の貢献割合は,発明が完成するに至った貢献度によって定まり,別途の権利が発生する発明と同一の基礎発明の提示者が改良部分の想到者より高く認定された。

参照条文

特許法35条3項 旧特許法35条4項 特許法73条2項

Key Word

職務発明,改良発明,使用者等が受けるべき利益の額,使用者等の貢献度,発明者間の貢献割合,相当の対価額

データ伝送方式国際裁判管轄事件

事件の表示

H19.11.28 東京地裁 平成16年(ワ)10667

判決のポイント

共同不法行為の成立を前提として,日本国内には支店等を有していない外国法人に対する訴えについて,我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められた。

参照条文

民事訴訟法5条9号 民法719条1項及び2項 特許法70条1項及び2項

Key Word

国際裁判管轄,不法行為地,共同不法行為,客観的関連共同性,教唆,幇助,出願経過の参酌