実務家のための知的財産権判例70選発明協会にて発売中!

蓄熱式床下暖房システム事件

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H22.1.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10175

判決のポイント

明細書に記載のない数値範囲を含む記載を追加する補正が,新規事項の追加には当たらないと判示された。

参照条文

特許法17の2条3項 特許法36条5項

Key Word

新規事項,発明特定事項を補足したり説明したりする補正,新たな技術的事項の導入

自動装着機事件

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H21.8.20 知財高裁 平成20年(行ケ)10432

判決のポイント

形式的には請求項の増加に見える補正が,内容等が考慮されて,限定的減縮に該当するとされた。

参照条文

特許法17の2条5項

Key Word

限定的減縮,増項補正,補正の目的要件

旅行業向け会計処理装置事件

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H21.5.25 知財高裁 平成20年(行ケ)10151

判決のポイント

本件発明は不明確・未完成でなく,自然法則を利用した技術的思想の創作である。訂正請求書の補正は適法である。

参照条文

特許法36条6項2号 特許法29条1項柱書 特許法126条3項 特許法126条4項 特許法131の2条1項

Key Word

発明不明確,自然法則の利用,訂正請求書の要旨変更

外径1.6mmの灌流スリーブ事件

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H21.6.24 知財高裁 平成21年(行ケ)10002

判決のポイント

特許出願に際して願書に添付された図面は,設計図ではなく,特許を受けようとする発明の内容を明らかにするための説明図にとどまるとして,引用例の図面を根拠として認定した引用発明と本願発明との同一性が否定された。

参照条文

特許法29条1項3号

Key Word

新規性,同一性,引用発明の認定,引用例の図面

AC電流センサ事件

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H21.9.30 知財高裁 平成20年(行ケ)10431

判決のポイント

進歩性を判断する際,引用発明において周知技術を適用する動機付けの有無を検討し,動機付けが仮に存在しても,引用発明への周知技術の実際の適用を想定して阻害要因の有無を検討する必要がある。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,動機付け,課題の共通性,周知技術,阻害要因

電子証券発行システム事件

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H22.3.24 知財高裁 平成21年(行ケ)10212

判決のポイント

電子化証券の電子データに含まれる「契約内容を示すデータ」に相違点があっても,当該相違点に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明に基づいて,契約の内容を適宜取捨選択して容易に想到し得たものである。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,ビジネス関連発明,データの内容

車両の制御方法事件

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H22.1.19 知財高裁 平成20年(行ケ)10333

判決のポイント

請求項の構成要件に付された符号は,請求項に記載された内容を理解するための補助的な機能を有するに止まるものであり,これをもって実施例に記載された用語の意味に限定するものではないと判断された。

参照条文

特許法29条2項 特許法70条2項 特許法36条5項

Key Word

発明の認定,明細書の記載の参酌,符号,容易想到性

繊維強化成形体事件

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H21.4.15 知財高裁 平成20年(行ケ)10300

判決のポイント

本件発明の課題が当業者に広く知られていたとは認められず,一般的な課題の解決のために本件発明の構成に想到することは困難であるとして,進歩性を否定した審決を取り消した。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

進歩性,一般的な課題,特定の課題,契機,技術常識

内燃機関の排ガス浄化方法及び浄化装置事件

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H21.9.16 知財高裁 平成20年(行ケ)10433

判決のポイント

拒絶理由に摘示されていない周知技術は,著名な発明として周知であっても,審決において容易想到性の認定判断の中で例外的に引用できるのは,引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られる。

参照条文

特許法29条2項 特許法50条 特許法159条2項

Key Word

手続違背,周知技術,容易想到性

ヘキサアミン化合物事件

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H21.11.11 知財高裁 平成20年(行ケ)10483

判決のポイント

先願明細書等に構造が具体的に記載されていない化合物を,特許法29条の2の先願発明として認定することはできないと判示した。

参照条文

特許法29条2項

Key Word

先願発明の認定,発明の成立性

ワークの研磨装置事件

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H22.1.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10314

判決のポイント

「前記回転軸を,前記軸心に沿った方向,及び,前記軸心に直交する方向に移動させる移動手段」の記載は,「軸心に沿った方向」と「軸心に直交する方向」の両方向に移動させることが可能であることを指すことが示された。

参照条文

特許法36条4項1号 特許法36条6項2号

Key Word

実施可能要件,明確性要件

性欲障害治療用薬剤事件

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H22.1.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10033

判決のポイント

医薬の用途発明に係る特許出願について,明細書の発明の詳細な説明に「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がないこと」のみを理由に,特許法36条6項1号の要件を充足しないとした審決の判断には,理由不備の違法がある,とされた。

参照条文

特許法36条6項1号 特許法36条4項1号

Key Word

医薬発明,薬理データ,サポート要件,実施可能要件

レボフロキサシン特許権存続期間延長登録事件

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H21.10.28 知財高裁 平成20年(行ケ)10487

判決のポイント

米国での臨床試験の期間は,日本での承認に必要な試験とはいえず,特許発明の実施をすることができない期間には算入できない。また,特許発明の実施をすることができない期間は,治験計画届や医療機関との契約書等によって客観的に明確になった日から進行を開始する。

参照条文

特許法67条2項 特許法153条2項

Key Word

特許権の存続期間の延長登録,外国臨床試験,手続違背

リチウム二次電池共同審判請求人欠落事件

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H21.11.19 知財高裁 平成21年(行ケ)10148

判決のポイント

複数在外者の共願に係る拒絶査定不服審判が,その一人のみにより提起された場合,補正の機会を与えねばならない。

参照条文

特許法131条1項 特許法131の2条 特許法132条3項 特許法133の1条 特許法14条

Key Word

共同出願,在外者,特許管理人,審決の合一確定,補正命令

多色有機ELパネル事件

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H21.11.19 知財高裁 平成21年(行ケ)10157

判決のポイント

差戻し後の訂正審判で訂正請求項の一部が独立特許要件を欠くことを理由に請求棄却とした審決が第1次判決の拘束力に違反するものとされた。

参照条文

行訴法33条1項 特許法126条

Key Word

判決の拘束力,訂正不可分

貼り薬事件

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H22.1.27 知財高裁 平成21年(行ケ)10209

判決のポイント

部分意匠の意匠権につき,当該部分を2色の色分け模様で構成した点に引用意匠との美感上の差異が認められた。

参照条文

意匠法3条1項3号 意匠法3条2項

Key Word

部分意匠,類否判断,色分け模様,美感,創作容易性

INTELLASSET事件

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H21.10.20 知財高裁 平成21年(行ケ)10074

判決のポイント

登録商標「INTELLASSET」が著名な略称「INTEL」を含むとして商標法4条1項8号に該当すると判断すべきではない。

参照条文

商標法4条1項8号

Key Word

著名な略称,著名な略称を含む商標

ベロマーク事件

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H22.1.13 知財高裁 平成21年(行ケ)10274

判決のポイント

申立理由以外の商標により取消決定することは問題がないとされた。引用商標が著名かつ独創性があり,引用商標に係る商品等が本件商品に係る指定商品等に含まれる場合でも,音楽は嗜好性が高く,需要者はそれなりの注意力で観察するので,広義の混同のおそれはないと判断された。

参照条文

商標法49条の9 1項 商標法4条1項15号

Key Word

申立理由以外の商標,需要者層,独創性,著名商標

NU-STEEL事件

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H21.12.28 知財高裁 平成21年(行ケ)10171

判決のポイント

指定商品が二以上併記されていたとしてもそれら指定商品の関係は互いに排他的ではないこと,また,商標に文字が付されていたとしても全体外郭が保たれる等の事情を勘案すれば使用標章と本件商標とは社会通念上同一であることが認定され,不使用取消審決が取り消された。

参照条文

商標法50条

Key Word

不使用取消,指定商品,社会通念上同一

静電矯正器誤訳訂正書却下事件

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H22.1.26 東京地裁 平成21年(行ウ)358

判決のポイント

特許法184条の4第1項による外国語特許出願をもとの特許出願として,日本語で記載された明細書等を添付して行った新たな特許出願(分割出願)は,誤訳訂正書による補正が認められない。

参照条文

旧特許法44条(平成18年改正前特許法) 特許法17条の2 特許法36条の2 特許法184条の4 特許法184条の12 2項

Key Word

外国語特許出願,分割出願,誤訳訂正書,補正

少量材料分配用装置事件

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H21.4.21 東京地裁 平成19年(ワ)10772

判決のポイント

請求項の用語に関する特許権者の主張が特許請求の範囲の記載に基づかないとして退けられ,請求項において規定する記載がなく,特許明細書中にも定義する記載がないとする解釈に基づき,進歩性欠如により特許法104条の3第1項が適用された。

参照条文

特許法29条2項 特許法123条1項2号 特許法104条の3 1項

Key Word

進歩性,用語の解釈,特許法104条の3

地震時ロック装置事件

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H21.4.27 大阪地裁 平成20年(ワ)4394

判決のポイント

機能的表現からなる特許発明の解釈は,実施例に限定されるとは限らないと判断するとともに,分割出願の特許発明の解釈時に原出願明細書のみに記載された事項を参酌することは許されないとした。

参照条文

特許法44条 特許法36条6項1号 特許法104条の3 1項

Key Word

機能的表現,分割出願,サポート要件,特許法104条の3

テレビジョン番組リスト事件

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H21.7.15 東京地裁 平成19年(ワ)27187

判決のポイント

分割出願に係る特許発明の特許請求の範囲に記載された文言の解釈において,その特許発明の原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないとして,特許発明の特許請求の範囲に記載の文言の解釈を行った。

参照条文

特許法70条 特許法44条1項

Key Word

技術的範囲,文言解釈,分割出願

ナビタイムサーバ事件

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H22.3.30 知財高裁 平成21年(ネ)10055

判決のポイント

被告製品は本件訂正発明の構成要件gの「選択手段」を具備せず,また,被告製品は本件訂正発明の均等物ではないと判断された。

参照条文

特許法70条2項 特許法101条4号 特許法101条5号 特許法100条1項 特許法100条2項 特許法102条3項 民法709条

Key Word

技術的範囲,発明の詳細な説明の参酌,均等侵害

中空ゴルフクラブヘッド控訴事件

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H21.6.29 知財高裁 平成21年(ネ)10006

判決のポイント

特許請求の範囲の「縫合材」を明細書等の記載から解釈すれば文言侵害は成立しないが,「縫合材」であることは非本質的な部分であるとして均等侵害の成立が認められた。

参照条文

特許法70条

Key Word

用語の意義,文言侵害,均等侵害,本質的部分

回転式加圧型セパレータをそなえた粉砕機事件

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H21.9.15 東京地裁 平成18年(ワ)21405

判決のポイント

被告は,発明の詳細な説明及び意見書の内容等に基づき請求項に記載の用語を限定解釈するように主張したが,裁判所は,この主張を採用せず,原告への2億5,167万3,433円及び遅延損害金の支払いを容認した。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

技術的範囲,用語の解釈,出願経過,限定解釈

重合可能なセメント混合物事件

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H21.4.22 東京地裁 平成18年(ワ)16119

判決のポイント

本件発明の構成要件中の1成分につき,原告が提出した分析実験の結果から当該成分が被告製品中に存在することが立証できたとはいえない,と認定された。

参照条文

特許法70条1項 民法703条

Key Word

構成要件充足性,実験結果,立証

熱伝導性シリコーンゴム組成物及び放熱シート事件

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H22.3.31 知財高裁 平成21年(ネ)10033

判決のポイント

補正により加えられた構成要件について,明細書の記載,出願経過等を参酌し用語の意義を限定的に解釈して文言侵害を否定し,その範囲外については特許請求の範囲から除外したと外形的に解されるとして均等侵害を否定した。

参照条文

特許法70条1項 特許法70条2項

Key Word

技術的範囲,発明の詳細な説明の参酌,出願経過の参酌,均等侵害,意識的除外,補正

医療検査用細胞容器事件

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H21.7.23 大阪地裁 平成20年(ワ)13282

判決のポイント

意匠の類否判断の基準を示した。

参照条文

意匠法24条2項

Key Word

類否判断,需用者,修正混同説

クリスタルキング事件

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H22.3.26 東京地裁 平成21年(ワ)1992

判決のポイント

歌手として出演する懐メロコンサートの新聞広告に,自己が所属していたバンド名と同一の標章を掲載する行為は,「商標の使用」には該当せず,当該商標権の侵害にならない。

参照条文

商標法2条3項8号 商標法3条2項 商標法36条1項 不競法2条1項14号 不競法3条1項 不競法4条 民法724条

Key Word

商標の使用,虚偽事実の告知・流布,消滅時効

AGATHA事件

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H21.10.13 知財高裁 平成21年(ネ)10031

判決のポイント

「Agatha Naomi」が採択されたとき以前から「AGATHA」は商品アクセサリーについて取引者,需用者間に周知されていたから,前者が一体として認識されるとしても「Agatha」の語から原告ないし原告の商品を想起,認識されるから,前者は後者に類似する。

参照条文

商標法37条1号 商標法2条3項8号 商標法36条1項

Key Word

商標の類否,結合商標

スイブルスイーパー事件

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H21.9.17 大阪地裁 平成20年(ワ)1606

判決のポイント

インターネット上のショッピングサイトを通して,ヘッド部分が回転する電気掃除機及びその附属品を販売した被告に対して,商標権侵害(原告1の請求)及び不正競争防止法に基づく(原告2の請求)損害賠償が認められた。

参照条文

不正競争防止法2条1項1号 不正競争防止法5条2項 民法709条

Key Word

商標の類否,商品等表示,周知性

ポリカーボネート樹脂製造技術事件

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H22.3.30 東京地裁 平成19年(ワ)4916(第1事件)
H22.3.30 東京地裁 平成20年(ワ)3404(第2事件)

判決のポイント

製造技術に関する営業秘密につき,被告の行為が不正競争防止法2条1項8号に該当するとして,図面等の使用,開示の差止め,記憶媒体の廃棄及び損害賠償の請求が認められた。

参照条文

不正競争防止法2条1項8号 不正競争防止法2条6項 不正競争防止法3条1項 不正競争防止法3条2項 不正競争防止法4条 民法709条

Key Word

営業秘密,不正競争行為

図表引用事件

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H22.1.27 東京地裁 平成20年(ワ)32148

判決のポイント

図表中のデータ(素材)の収集に労力を要したり困難性があったりする場合でも,その素材の選択及び配列がありふれた一般的なものであれば,当該図表は編集著作物に該当しないと判断された。

参照条文

著作権法12条1項 著作権法32条1項

Key Word

編集著作物,図表の引用,明瞭区別性,主従関係

オートバイレース写真事件

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H21.12.24 知財高裁 平成21年(ネ)10051

判決のポイント

事業者の一般的指揮の下にプロの写真家として行動し撮影した写真は,契約に基づいて提供された労務の成果物であっても職務著作には該当せず,著作者は写真家となる。

参照条文

著作権法15条1項 著作権法18条 著作権法19条 著作権法20条 著作権法59条

Key Word

職務著作,法人等の業務に従事する者,著作者人格権

TVブレイク事件

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H21.11.13 東京地裁 平成20年(ワ)21902

判決のポイント

著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る場合は侵害の主体となる

参照条文

著作権法21条 著作権法23条 著作権法112条 著作権法113条 プロバイダ責任制限法3条

Key Word

侵害行為の主体,カラオケ法理,プロバイダ責任制限法

抗CD20モノクローナル抗体共同発明事件

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H22.2.18 大阪地裁 平成21年(ワ)1652

判決のポイント

共同発明者名を発明者欄に記載せずに特許出願を行うことは,発明者掲載権の侵害であり,不法行為となる。

参照条文

パリ条約4条の3 特許法施工規則66条 特許法26条 特許法28条 特許法38条 民法710条

Key Word

発明者掲載権,共同出願違反

ラベルライター職務発明事件

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H21.6.25 知財高裁 平成19年(ネ)10056

判決のポイント

使用者が職務発明報酬対価請求訴訟を提起された後に初めて無効事由の存在を主張して従業者への配分を免れようとすることは旧特許法35条の趣旨のみならず禁反言の見地からも到底容認できず,さらに,権利放棄後の期間についても超過売上高の発生を観念し得ると判示した。

参照条文

旧特許法35条3項 旧特許法35条4項(平成16年改正前特許法)

Key Word

職務発明報酬請求,無効事由,権利放棄,超過売上高

「ピンク・レディーdeダイエット」パブリシティ権侵害事件

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H21.8.27 知財高裁 平成20年(ネ)10063

判決のポイント

パブリシティ権侵害の判断基準を示し,具体的事案においてパブリシティ権侵害を認めなかった。

参照条文

民法709条

Key Word

パブリシティ権,著名人,氏名・肖像の使用